フィリピン中部の台風災害から1カ月、依然400万人が避難生活

 フィリピン中部を襲った台風30号(フィリピン名ヨランダ)による災害から、1カ月が経過した。救援活動が一段落する中、政府には生き残った住人たちの生活を立て直すための早急な対応が求められている。政府は被災で職を失った人々に就職説明会を開催するなど支援を進めているが、その一方で、被災地に見切りをつけマニラ首都圏などに移住する人々も多い。
(マニラ・福島純一)

死者・行方不明者7000人超

被災地再建に最長5年も

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11月24日、フィリピン・セブ島北部ダアンバンタヤンの学校で、被災者を診療する自衛隊員(時事)

 政府によると、これまでに判明した死者は5796人に達し、行方不明者も依然として1700人以上。被災者は国民の約1割に相当する1200万人以上で、約400万人が家を失うなどして避難生活を強いられている。これまでに確認された台風による被害額は、350億ペソ(約818億円)となっているが、依然として混乱が続き集計できない地域もあり、さらに拡大することが予測されている。

 被災地では救援活動が一段落する一方、今後のインフラの復旧や地域の復興が大きな課題となりつつある。

 政府は先月30日までに、約410億ペソ(963億円)を2014年前半までの復興予算として投入し、被災者向け仮設住宅の建設やインフラの復旧などを行う方針を明らかにした。これらの予算は、台風による被害が大きかった14州、171の自治体に重点的に振り分けられる見通し。

 政府関係者は、被災地の再建には3~5年かかるとの見通しを明らかにしている。今回の甚大な被害を省み、再建には災害防止対策も盛り込まれる見通しで、高潮による被害を防止するため、海岸線から一定距離には、住居を建設できないエリアを設けるとしている。アキノ大統領は、単に復旧するだけでなく、災害時に避難所として機能する政府施設や学校などの構造の強化を求めている。

 さらにアキノ大統領は、被災地の早期復興を目指すため、元上院議員のラクソン氏を復興担当の責任者に任命した。この任命を受け入れたラクソン氏は、被災地の壊滅的な被害に言及し、「再建はゼロからのスタートで困難を極めるだろう」と指摘。16年にアキノ大統領の任期が終了するまでに、復興を完了する決意を明らかにした。

 また労働雇用省は、支援活動の一環として、レイテ州で職を失った被災者に対し就職説明会を行う方針。民間企業などから約4000件の求人を用意しており、被災者に安定した仕事を提供し復興の促進を図る。また国際労働機関(ILO)は、今回の台風災害で職を失った労働者が500万人以上に達していると指摘し、政府に対し被災地での瓦礫(がれき)撤去や建設作業などで、被災者を緊急雇用し収入を与えるよう求めている。

 また国連も瓦礫の撤去などに被災者を積極的に雇用するよう政府に呼び掛けており、国連関係者は「経済活動の正常化だけではなく、作業に参加することで生活の尊厳を取り戻すことができる」と、その意義を強調した。

 しかし復興への取り組みは始まったばかりであり、インフラが破壊された被災地での生活を諦める住人も多い。社会福祉開発省によると、これまでに少なくとも1万8000人の被災者が、マニラ首都圏に軍の輸送機などで移動してきたという。その多くは、マニラ首都圏に住む親戚などを頼り、新たな生活を始めるのが目的とみられている。

 一方、日本政府は被災地に、国際緊急援助隊・医療チーム第3次隊を派遣し支援を継続することを決定した。在フィリピン日本国大使館の発表によると、国際緊急援助隊は、被害の大きかったレイテ島タクロバン市を拠点に活動を行っており、既に現地入りした第1次隊および第2次隊により、1500人以上の住人に対し診療を行ったという。

 日本政府はこれまでに、1000人以上の自衛隊部隊や国際緊急援助隊の派遣に加え、3000万㌦(約30億円)の緊急無償資金協力や、6000万円相当の緊急援助物資など、合計で5310万㌦(約53億円)の援助を行っている。

 また日本の外務省は30日までに、レイテ島などの被災地に住んでいた日本人133人の無事を確認したと発表した。日本政府は現地で在留届を出していた日本人の安否確認をこれまで続けてきた。