比大統領選に向け動き本格化
後継候補ロハス氏の人気低迷
ポー氏取り込み図る与党
このほど来年5月のフィリピン大統領選をめぐり、アキノ大統領が後継候補としてロハス比内務自治長官を正式に指名。与野党の次期大統領選への動きが本格化している。しかし、ロハス氏の支持率は低迷を続けており、野党候補のビナイ副大統領との対決を不安視する声も出ている。そのため与党は、一番人気のポー上院議員の取り込みを試みているが難航している。(マニラ・福島純一)
ビナイ副大統領は政権批判を開始
ロハス氏は2011年の大統領選で、自由党から大統領候補として出馬する計画だったが、フィリピン民主主義の象徴であるコラソン・アキノ元大統領の死去を受け、その息子で当時、上院議員だったアキノ氏に出馬を求める国民の声が高まり、大統領候補をアキノ氏に譲った経緯がある。そのため政権が発足した当初から、アキノ大統領の後継はロハス氏が確実視されていた。
しかし、民間調査会社パルスアジアが6月に発表した次期大統領選に関する世論調査では、ポー氏が30%の圧倒的な支持率でトップに躍り出る一方、ビナイ氏は汚職疑惑の影響で22%に支持を減らし2位に下落。3位には「武闘派 」で知られる現ダバオ市長のドテルテ氏が15%を獲得して浮上し、ロハス氏は10%の支持で、エストラダ元大統領(現マニラ市長)と同率4位という位置に付けている。
ロハス氏をめぐっては、フィリピンの政治家には珍しく、汚職をめぐる噂(うわさ)が皆無で清廉潔白なイメージがある一方、祖父がマニュエル・ロハス第5代フィリピン大統領で、父親も上院議員を務めるなど、代々政治家を輩出してきた家系出身のためか、真面目過ぎる性格で庶民や貧困層に不人気なことが大きな欠点となっている。与党内ではアキノ大統領による後継指名を受け、今後ロハス氏の支持率が上昇するとの楽観的な見方が出る一方、ロハス氏が前回の副大統領選でビナイ氏に敗北を喫しており、2度目の対決を不安視する声も出ている。ロハス氏は04年に出馬した上院選で、「ミスター・パレンケ(市場)」というキャッチフレーズを使い、庶民派を強調してトップ当選を勝ち取っており、今後どのようなキャンペーンを展開して、アキノ大統領の人気を次期大統領選での得票に繋(つな)げていくのかが課題となる。
また大きな懸念事項として、ロハス氏とポー氏がそれぞれ大統領候補として出馬した場合、与党系の票が2人に割れてしまい、結果的にビナイ氏が当選する可能性が高まるとの意見も与党内から出ている。ポー氏は無所属だが、前回トップ当選を果たした上院選では、ロハス氏と同じ自由党の支持を受けていた。これまで何度かアキノ大統領がポー氏と会談を行い、与党から副大統領候補としての出馬するよう要請したが、ポー氏は依然として態度を保留。10月までに決断する方針を示しており、今後の動向に注目が集まっている。
一方、ビナイ氏は6月にアキノ政権の閣僚を辞任してから、次期大統領選に向けた動きを加速させている。以前は閣僚ということで政権批判は控えていたが、アキノ大統領の施政方針演説の1週間後に、「真の施政方針演説」と題した演説を行い現政権を痛烈に批判した。その中でビナイ氏は、貧困層に利益をもたらさない裕福層中心の経済成長や、依然として避難生活が続く台風災害の被害者たち、さらに故障による運休が相次ぐ高架鉄道など、現政権の失態を指摘。「貧しい人々への共感を持っていない政権がさらに6年間続くなら、何の進展も望めないだろう」と述べ、与党候補のロハス氏に挑戦状をたたき付けた。
与党内では、支持率が低迷するロハス氏に危機感を抱き、ポー氏を大統領候補にすべきだとの意見が出ているとも伝えられており、この問題をめぐって与党が分裂の危機にあるとの見方も出ている。与党陣営にとって次期大統領選の行方は、ポー氏の取り込みが大きな課題となりそうだ。