本音の次世代交流 学生会議「疎通で懸案解決を」

日韓国交正常化50年 「嫌韓」「反日」を越えて(8)

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昨年8月、東京で行われた日韓・韓日学生会議の交流行事で分科会に臨む両国の学生(写真提供・韓日学生会議)

 日韓双方の現役大学生が相手国の文化体験や両国間の懸案をめぐるディベートなどを通じ、相互理解や友好増進を図る日韓学生会議(日本)、韓日学生会議(韓国)という学生姉妹団体がある。1985年に結成され、毎年夏休みを利用してメーンの交流行事を東京・ソウルで交互に開き、今年30回目を迎える。

 昨夏、東京での行事で日本の政治家による靖国神社参拝を分科会テーマに選んだ韓国の金秀貞さん(成均館大学儒学東洋学科2年)は、「日本の学生が率直な意見をぶつけてくれないというもどかしさを感じた」と話す。

 韓国では就学前から歴史教育を受け、特に日本による植民地統治の“被害”について強調されることが多い。こと歴史認識問題では大学生にもなれば誰もが自分の意見を持っている。これに対し、日本側ではその時期は歴史の一時代にすぎず、学生たちの関心も低い。こうしたテーマではえてして韓国側の学生が「暖簾(のれん)に腕押し」になることが多い。

 今夏の交流行事を日韓学生会議委員長として切り盛りしていく窪田彩乃さん(駒澤大学法学部政治学科3年)も「私自身、K―POPにはまったことが韓国に関心を抱くきっかけだった。学術面の交流になると、こちら側は勉強不足」と認める。

 興味深いのは靖国神社の分科会で「結論」を導き出していることだ。会議後にまとめられた報告書は「戦争や戦没者」に対する立場が「克明に逆さま」である日韓の認識差を埋めるため、「互いに疎通し理解できる場を作ってそれを広げていく」よう促し、それが「情緒的に合意できる解決策」につながると指摘している。

 金さんは「韓日関係が悪ければ悪いほど、むしろお互いに会って理解する努力が必要」と語る。「問題があるからこそ首脳同士が会うべきだ」という安倍晋三首相の再三にわたる呼び掛けにも応じようとしない朴槿恵大統領に対する苦言のようにも聞こえた。

 韓国側には日本の学生と討論する中で自分たちの対日批判に、ある「落とし穴」があったことに気付く学生もいる。

 「私たち韓国人は『独島(竹島の韓国名)はわが国の領土』と当たり前のように言っているが、実際に何を根拠にしているのか突き詰めたことがない。慰安婦問題にしても何が問題なのか、その詳細は知らないことが多い」(韓国外国語大学日本地域学科2年の姜旻珠さん)

 韓国の若者にこうした冷静な議論ができる人が増えていけば、感情的な世論に歯止めが掛かるかもしれない。

 昨年の交流行事を最後に日本側委員長という“大役”を終えた在日韓国人4世の朴沙紀さん(桜美林大学ビジネスマネジメント学群2年)は、今後の会議への期待を語ってくれた。

 「日韓双方の学生が会って討議したり、生活をともにすれば時にはケンカになることもあるが、それがあるから逆に楽しいし、相手に対する思いが強くなる。民間レベルでは日韓友情の絆を築けるということを発信し続けてもらいたい」

 (編集委員 上田勇実)