複数の網で無症状感染判定、IgM抗体検査の活用向上を

謎多き新型コロナ PCR検査の“限界”と抗体検査(上)
謎多き新型コロナ PCR検査の“限界”と抗体検査(下)

 7月に入り、目黒と銀座に幾つか物件を保有するビル管理会社から医療法人社団JOYの伊東エミナ理事長(医学博士・エミーナジョイクリニック銀座院長)に「飲食店やレンタルオフィスなどさまざまな業種の従業員が数百人おり、抗体検査で感染の有無を定期的に確認し安心・安全な事業継続をしたい」との依頼があった。

抗体検査の利用をチャートで説明する伊東エミナ院長(加藤玲和撮影)

 抗体検査に来院するのは殆(ほとん)どが会社勤務の20~60代、全員が無症状だが、7月後半からさらにIgM抗体陽性者つまり“無症状キャリア”の数が増えている。また、慢性疾患で休職・通院中の患者さんで、復職前に念のため行った検査でIgM抗体陽性、すなわち感染が見つかり、職場クラスターリスクを回避したケースもある。

 また、抗体検査キットの精度に関して、伊東院長のクリニックでは感度94%、特異度96%のキット(米国医薬品局認証済)を使用し、現在までのところ偽陽性(感染していないのに陽性反応が出る)になったケースはない。

 「新型コロナの感染問題が長期化する見込みの現在、多くの無症状の人にPCR検査を定期的に行うことができない状況では、人と接する必要がある人に対して、精度の高い抗体検査を広く定期的に行うことで、“無症状キャリア”をいち早く見つけ隔離することが可能」「旅行も接客も、抗体検査を小まめにしてIgM抗体陰性の人は堂々と行って良いのでは。コロナによる差別問題なども、検査体制が不十分で誰が感染者なのか分からないという不安のせいもあるのでは。行政にもPCR検査のみでなく、IgM抗体検査の利点をもっと活用して検査体制の質と量を向上させてもらいたい」(伊東院長)という。

 IgM抗体陽性者は、陰性化するまで約2週間ごとに検査を継続。伊東院長が必要と判断した希望者には、新型コロナの増殖を抑制する効果が欧米などで医学的に認められている薬を処方している。

検査チャート

 新型コロナウイルスの“厄介な特徴”の一つに、体内で長期間ウイルスが増殖し、他人に感染させるリスクがあるだけでなく、体の傷として重症者に限らず、無症状や軽症者の間にも“後遺症”が残ることがさまざまな調査で明らかになりつつある。

 また、新型コロナの感染が“心の傷”になることもある。「自分が祖父、祖母、叔父、叔母に接触したことが原因で新型コロナの感染が広がることが心配」という思いから自費で検査を受ける人が増えている。

 特に持病がある高年齢者にうつしてしまい、重症化・死亡ということになると、「自分のせいで……」と、楽しい思い出を残すはずが、一転、生涯の“心の傷”を残してしまうことになりかねない。

 冬場に新型コロナウイルスが“爆発的感染拡大”することは何が何でも抑え込まなければならない。

(編集委員・太田和宏)