梶田隆章さん、ノーベル物理学賞の記念講演
「間違い」が一転「興奮」に、研究を続ける強い動機に
ノーベル物理学賞を受賞する梶田隆章・東京大宇宙線研究所長(56)は8日午前(日本時間同日夕)、ストックホルム大学で受賞記念講演を行い、素粒子ニュートリノに質量がある可能性をつかんだ際の「興奮」を語った。
梶田さんは紺色のスーツに白いネクタイ姿で登壇。満席の会場に向け、「この講演ができて、とても光栄だ」と語り掛けた。
講演の冒頭で梶田さんは、岐阜県飛騨市神岡町の観測施設カミオカンデで、1980年代後半に得たデータが予測と大幅に異なっていたエピソードを紹介。「大変な間違いをしたと思った」が、検証を重ねた結果、質量がないと考えられていたニュートリノが、質量を持つ可能性があると分かったと説明した。
「興奮した。研究を続ける強い動機になった」と笑顔で振り返った梶田さん。後継のスーパーカミオカンデで、より精密なデータを積み重ねて結論を出すまでを簡潔な英語で説明し、「ニュートリノについてさらに多くを知れば、宇宙の物質の起源を理解する手掛かりが得られるかもしれない」と研究の進展を期待した。
梶田さんは以前から、自らの研究基盤はカミオカンデ研究チームの初代リーダーで恩師の小柴昌俊・東大特別栄誉教授(89)2002年ノーベル物理学賞が作ったと話してきた。講演では大学院生だった1983年、カミオカンデで小柴さんや先輩研究者の陰に隠れて写っている写真を披露し、「後ろにいる学生が私です」と説明。会場の笑いを誘った。(ストックホルム時事)