大村智さん、ノーベル医学生理学賞の記念講演
「地球からの素晴らしい贈り物」と題して、「自然が答え持っている」
熱帯の寄生虫病薬を開発し、今年のノーベル医学生理学賞を受賞する大村智・北里大特別栄誉教授(80)は7日午後(日本時間同日夜)、ストックホルムのカロリンスカ研究所で「地球からの素晴らしい贈り物」と題して記念講演を行った。
歴代受賞者が講演を行ってきた伝統あるホールに、黒いスーツにえんじ色のネクタイを締めて登場した大村さん。「ここに来られてとても光栄だ」と口火を切った。
微生物の力は、研究者の思考をはるかにしのぐと考える大村さんは、「自然が答えを持っている」との研究哲学を披露した。
会場を埋めた聴衆に向け、静岡県の土の中にいた放線菌が有益な化学物質を生み出し、改良されて熱帯の寄生虫病薬「イベルメクチン」になる過程を紹介。2004年にアフリカを訪れた際、イベルメクチンでオンコセルカ症(河川盲目症)から救われた子どもたちに囲まれた写真をスクリーンに映し、「大人の多くは盲目だが、薬によって病は激減した」と功績を語った。
また、「科学は一人ではできない」との持論を紹介。さまざまな研究者と力を合わせてきており、その代表としての受賞だと説明した。
大村さんは最後に、「これからも社会に利益をもたらす物質を探し続けるし、若い科学者にもそうするよう励ますつもりだ」と宣言。イベルメクチンに続く物質を見つけたいと締めくくった。(ストックホルム時事)