結び前の一番で白鵬が「まさか」の猫だまし
大入り館内は拍子抜け、遊び心が生まれたか
結び前の一番で「まさか」が2度起きた。白鵬の猫だましだ。立つと同時に栃煌山の目の前で両手のひらを合わせてたたき、左へひらり。前のめりになった相手が懸命に残して向き直ったところで、再び「パチン」。右四つに組み止めて寄り切った後は、どこか得意そうな笑みも浮かんだ。
取組前に、11日目に対戦する稀勢の里が2敗に後退した。優勝争いでさらに優位になったことで遊び心が生まれたか。支度部屋では何度も手を打ち鳴らしておどけ、「楽しんでいます。こういう技もあるということ」と事も無げに言った。
だが猫だましは本来、小兵の力士が格上相手に仕掛ける奇襲。北の湖理事長(元横綱)は「横綱がやるべきことではない」と繰り返し、「前代未聞。あれで負けたら横綱の品格に引っかかる」と厳しく断じた。
休場明けでの優勝に大きく前進した白鵬は意気揚々と引き揚げた。しかし、力のこもった一番を期待した大入りの館内には拍子抜けしたようなため息も。珍しい光景とはいえ、7日目に大技のやぐら投げでファンをうならせた時とは違う空気が流れていた。