幻のオペラの録音テープ、55年ぶりに発見
三島由紀夫原作「あやめ」、ラジオ初演のオリジナル
TBSホールディングスは16日、作家の三島由紀夫が終戦直後に発表した小説を原作に、ラジオ放送用に仕立てたオペラ「あやめ」の初演オリジナル録音テープを55年ぶりに発見したと発表した。専門家は「後に『近代能楽集』など古典に基づく作品を手掛け、新しいメディアにも関わった三島の方向性を示す初期の例として貴重だ」(三島由紀夫文学館の山中剛史研究員)と話している。
音源は1960年11月に中部圏、翌年1月には東京圏で放送。その後、所在不明になっていたが、中部日本放送のテープ庫の中からこのほど発見された。作品は三島が終戦の2カ月後に発表した短編小説「菖蒲前(あやめのまへ)」を自ら戯曲化。これを同局がラジオオペラ化した。
牧野由多可作曲の音楽は演奏時間27分あまり。石丸寛指揮の東京室内管弦楽団と友竹正則、立川清登ら声楽家や邦楽演奏家の平井澄子が協演。古典的世界が舞台の物語にふさわしく、平安朝を思わせる響きの中、三島ならではの妖艶でファンタジックな世界が描かれる。
音源は12月16日に日本コロムビアから発売される「戦後作曲家発掘集成~TBS VINTAGE J CLASSICS~」に収録される。