北陸新幹線が延伸、「百年に一度」のチャンス
開業まで1カ月、観光客の増加に膨らむ期待
3月14日の北陸新幹線の長野-金沢間延伸開業まで残り1カ月。東京-金沢間は最短2時間28分で結ばれ、所要時間は大阪-金沢間の在来線特急「サンダーバード」(最短2時間31分)とほぼ等しくなる。首都圏からの観光客の流れが太くなるとみられる北陸地域では、「百年に一度のチャンス」(谷本正憲石川県知事)に向けた準備が進んでいる。
石川県は観光関連業者向けに「おもてなし塾」を開き、新幹線が先に通った長野県や九州の事例を紹介。一般市民向けの「おもてなし講座」では今年度、約3000人に分かりやすい観光案内の方法を学んでもらった。観光客に親しみやすい表示として、新幹線開業に合わせ、JR金沢駅の東口は「兼六園口(東口)」、西口は「金沢港口(西口)」に改められる。
黒部宇奈月温泉、富山、新高岡の3駅が設置される富山県。石井隆一知事は「雄大な自然やおいしい食べ物などの潜在力を発揮できていなかった」と話し、新幹線開通による県内観光地へのアクセス改善に期待する。
新潟県は佐渡島を含む新たな観光ルートを売り込む。新幹線の駅ができる同県糸魚川市は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が指定した「糸魚川世界ジオパーク」を訪れる修学旅行生や、長野県からの海水浴客の増加を期待する。
長野駅が新幹線の終着駅から途中駅に変わる長野県は、「関西との心理的距離が縮まる」(長野市幹部)と見込み、大阪などから新たな観光客を増やしたい考えだ。
北陸新幹線の敦賀延伸は2022年度の予定だが、福井県は金沢延伸の効果を取り込む構え。県観光連盟のスタッフを金沢駅構内に新たに常駐させ、観光客に福井県まで足を延ばすよう働き掛ける。「金沢は(多数の観光客で)パンクするので、福井も十分受け皿になる」(県議)という計算だ。
沿線各地が観光客誘致に力を入れる背景には、「観光で良い場所と思ってもらえれば、就職や定住にもつながる」(石川県幹部)との狙いもある。ただ、新幹線開通には地域住民の流出を促す影響もある。富山市は新幹線で県外の学校に通う学生を対象に毎月2万円の補助を提供し、若年人口の流出に歯止めをかける考えだ。