頑張れ! 超小型人工衛星「金シャチ1号」
打ち上げ2ヵ月から機能停止、開発の中小企業は復活願う
中部地方の中小企業と名古屋大などが共同開発した超小型人工衛星「ChubuSat-1(通称金シャチ1号)」の打ち上げから約2カ月。打ち上げは成功したものの、その後交信不能に陥り、現在全機能を停止している。予定していた観測も進んでおらず、関係者は「何とか回復して」と復活に期待を寄せている。
金シャチ1号は名大、大同大(名古屋市)と、高度なものづくりの技術を持つ中部の航空宇宙関連中小企業が共同開発した。2011年に開発に着手、各社が部品を持ち寄るなどし、開発費用を大型衛星の約100分の1に抑えた。技術者らの夢と情熱を詰め込んだ1辺50センチの立方体は昨年11月6日、ロシアの基地から打ち上げられた。
任されたミッションは、赤外線カメラによる地表温度変化の測定。継続的に測定し、火山の活動や山火事の発生を把握することが期待されている。また宇宙ごみの観測も計画されている。
打ち上げ成功時、開発を呼び掛けた名大太陽地球環境研究所の田島宏康教授(51)は「さらにコストを下げて、民間企業による衛星利用の拡大につなげたい」と夢を語った。
しかし打ち上げ後、太陽電池パネルで効率的に自己発電する機能が不調に。充電不足で地上からの命令が受信できなくなった。現在は全ての機能を停止、再始動に必要な量まで充電されるのを待っている状況だ。
電子機器を収納するアルミケースなどを製造した玉川工業(愛知県春日井市)は従業員約100人の小所帯ながら、歴代H2Aロケットのメーンエンジン部品も担当した実力派。製造部長の村上重彦さん(49)は「最先端技術の一端を担うことができて良かった」と胸を張るが、機能停止に「せっかく飛ばしたのだから、何とか頑張ってほしい」と天を仰ぐ。
田島教授は「宇宙分野の研究にトラブルは付き物」と冷静に受け止めつつ、「まだ可能性はある。いろいろな手だてを考えていきたい」と復活を祈る。15年度には後続機「金シャチ2号」の打ち上げも予定している。「打ち上げて初めて分かる想定外のこともあった。1号の経験を生かしたい」と話している。