台風30号でテント村住人「どう生きていけば」
比タクロバン、貧困から抜け出せず
台風30号で多くの死者を出したフィリピン・レイテ島の中心都市タクロバンでは、今なおテント暮らしを余儀なくされる人がいる。多くは以前から貧しい生活を送る女性や子供で、仕事も見つからない。「どう生きていけばいいのか」。復興から取り残された人々の支援が切実な課題となっている。
タクロバン空港から南に約4キロ離れた海岸沿いの89地区にあるテント村には、約80人が暮らしている。マリサ・カーテルさん(43)は被災1カ月後の昨年12月、全壊した近くの自宅から移ってきた。6畳ほどのテント内で、子供5人と住む。
テントでの生活は「昼間はまるでオーブンの中にいるよう。雨が降るとベッドマットが水に浮かんでしまう」。食料は援助団体からの物資が中心。周囲は蚊が多いため、デング熱に似た症状を起こすチクングニア熱にかかる人も多いという。
カーテルさんは被災前、近所に子供服を売り歩く行商をしていたが、今は働き口が見つからない。「早く自立したいけど、支援団体が紹介してくれる仕事は男性対象のものが多く、女性にできる仕事がほとんどない。自分でも探したが、だめだった」と話す。行商を再開したいが元手となる現金がないため、めどが立たない状況だ。
台風直撃時の記憶も職に就く妨げとなっている。高潮で3歳の孫娘をはじめ家族3人を失い、自身も風で天井が吹き飛ばされた自宅から辛うじて逃げ出した。当時を思い出して真夜中に目が覚め、そのまま眠れない日も多い。
タクロバン市からは10月末までにテントを立ち退くよう言われたが、今も住み続けている。「ここから1キロ離れた場所に家を紹介されたが、骨組みしかない。出て行きたいが、どこに行けばいいというのか」と途方に暮れている。(タクロバン時事)