御嶽山噴火で、富士山の地元に警戒感が強まる
登山者装備、連絡体制を見直し
御嶽山の噴火を受け、富士山の地元で警戒感が強まっている。世界文化遺産に登録され、毎年夏に30万人が訪れる名峰は、江戸時代に大噴火を起こした活火山でもある。静岡、山梨両県では従来の対策を見直す動きが出始めた。
「ヘルメットは従業員らの分しかない。最低限の分はそろえないと」。山小屋経営者らでつくる富士山頂上奥宮境内地使用者組合の宮崎善旦組合長は、登山者の装備を見直す必要を感じている。「かっぱや防寒具と同じように、防災頭巾でもいいから携帯するよう呼び掛けることになるのでは」と話す。
登山道「須走ルート」がある静岡県小山町の新井昇危機管理監は「ご来光の時は1000人も山頂にいる。山小屋にヘルメットを用意するといっても、可能なのか」と懸念。「情報をいかに早く伝達するかというソフト面ならできる」と登山者への連絡体制の充実を訴える。
宮崎組合長も来夏に向け、連絡体制の見直しを考えている。ただ、夏以外の閉山期に足を踏み入れる人も多い。
静岡県の岩田孝仁危機管理監は「緊急情報は山小屋と携帯電話のエリアメールで伝えることにしているが、閉山期はアンテナが撤去される」と指摘する。常に緊急情報が伝わるようにするのは簡単ではない。
山梨県でも、県議会で避難シェルター設置などの対策を促す声が出始めた。県は監視体制の強化や、噴火の予兆に関する情報の伝達・共有などの議論を進める方針だ。
富士山は1707(宝永4)年以来、噴火していないが、2000年に低周波地震が多発し、噴火に備えた議論が本格化した。
静岡、山梨、神奈川3県と国などでつくる富士山火山防災対策協議会は今年2月、初の広域避難計画を策定。溶岩流などの避難対象を75万人と推計した。円滑に避難するための対策を年度内にまとめる。
岩田危機管理監は「もともと検討課題はあったが、目の前でああいう事態が起きた。みんな真剣に考えることになる」と話した。