吉田沙保里が新階級で完勝、最後はタックル
レスリング世界大会53キロ級決勝で15連覇
日の丸を掲げ、マットを悠々と1周した。吉田が新たな53キロ級で、貫禄を示す世界大会15連覇。「何度取っても気持ちいい」と勝利の余韻に浸った。
マットソンとの決勝。1点リードの第2ピリオドで、消極的な吉田に警告が出た。30秒以内に得点しなければ、相手に1点が入るルール。これで「覚悟が決まった。自分にはタックルがある」。鋭く潜り込んで片足を取ると、豪快に相手を倒す4点技が決まり、一気に勝負を決めた。
決勝以外は初対戦の選手が続き、さすがの吉田も警戒した。「向こうは私のことを知っている」。それでも、圧勝で勝ち上がり、準決勝では両足タックルからわずか49秒のフォール勝ち。試合ごとに調子を上げ、終わってみれば1点も失わずに頂点に立った。
この日は3月に急逝した父栄勝さんの月命日。3歳から手ほどきを受けた父に「見ていてね」。遺影に触れてからマットへ上がった。「いい報告がしたかった。ほっとしている」と声が和らいだ。
減量の影響と相手のスピードに戸惑い、6月の全日本選抜では精彩を欠いたが、今回は新階級に完全に適応した戦いぶり。この先にアジア大会も控える吉田は「気は抜けない。研究と体力作りをしていきたい」。2年後のリオデジャネイロ五輪から実施される53キロ級でも、王座を譲るつもりはない。(タシケント時事)