吉田調書、見えぬ原子炉「何もできない」


東京電力福島第1原発事故で、計器機能せず判断困難

吉田調書、見えぬ原子炉「何もできない」

東京電力福島第1原発の免震重要棟で、報道陣の取材を受ける吉田昌郎所長(当時)。右隣は細野豪志原発事故担当相(同)=2011年11月12日、福島・大熊町(代表撮影)

 東京電力福島第1原発事故では、電源喪失などによって原子炉内の水位や圧力などを監視する計器が機能しなかった。吉田昌郎元所長の調書には、原子炉で何が起きているのか分からないまま、対応を迫られた現場の苦悩が随所にうかがえる。

 第1原発では2011年3月11日の事故発生直後から、計器を読み取れない状態になった。吉田氏は「原子炉の圧力と水位がちゃんと把握できないと、どういう状況だというのは分からない」と説明。「計器をまず見えるようにしないと何もできないから、何とかしろという話はした」と振り返っている。

 11日夜の段階で1号機の水位が把握できるようになり、核燃料は原子炉内で水没した状態と表示された。

 だが、水位計は正常に機能しておらず、実際は炉内の水が大量に失われていた。吉田氏は「今にして思うと、水位計をある程度信用したのが間違い」「大反省」と後悔。一方で「炉の状況が分からない。炉圧が分からないし」と判断の難しさを訴えている。

 内部で圧力が高まった3号機の格納容器を破損させないため、13日にベント(排気)を試みたことについても、「本当に分からない状態で操作している。確認すべき項目が何も見られない状態だから、成功したのかと聞かれるけれども、知りませんというのが私の答え」などと述べた。

 聴取の中で、政府の事故調査・検証委員会の担当者から原発の計器について「何があってもぶっ壊れないで、おおよその値がちゃんと出ているものはないのか」と問われると、吉田氏は「最終的に非常に単純な構造で、これだけは分かるという設計思想はない。あれば良いなというのは、今となれば当然そう思う」と答えている。