ヒッツフェルト監督、静かにピッチ去る


W杯2大会連続でスイスを率いた名将、引退後は解説者に転身

ヒッツフェルト監督、静かにピッチ去る

アルゼンチン戦で最後の指揮を執ったスイスのヒッツフェルト監督=サンパウロ(時事)

 名将がピッチを去った。オットマール・ヒッツフェルト監督(65)がW杯2大会連続で率いたスイスは、優勝候補のアルゼンチンを苦しめた末に敗退。この一戦を最後に監督業から引退し、解説者に転身する。

 アルゼンチン戦は、狙いが的中したかに見えた。「メッシに3、4人を対応させて止める考えだった」。守備的MFのインラーとベーラミを中心に徹底マーク。メッシがいら立ちを募らせる一方で、前半はスイスの方がカウンターから決定的なチャンスをつくっていた。

 しかし、無得点のまま後半に入り、スイスの運動量が落ちると防戦一方。0-0で延長戦を迎えると、疲労と興奮のただ中にいた選手たちを「いいプレーをしているぞ」と鼓舞して送り出した。延長後半にメッシのドリブル突破から決勝点を許して力尽きたが、粘りは十分に発揮できた。

 母国ドイツのバイエルン・ミュンヘンとドルトムントを欧州王座へ導き、初めてW杯で采配を振るった前回大会の1次リーグ初戦では優勝したスペインを撃破。その名前はしっかりと歴史に刻み込まれている。

 アルゼンチン戦直前、兄の訃報が発表された。試合後の記者会見。チームカラーの赤いネクタイを締めたヒッツフェルト監督は「これからは穏やかな生活を送る」と静かな口調で締めくくった。(サンパウロ時事)