豪州沖の世界最大サンゴ礁、水温が5度上昇


最終氷期~間氷期1万年で、国際研究チームの掘削調査で判明

豪州沖の世界最大サンゴ礁、水温が5度上昇

オーストラリア・タウンズビルに停泊中の掘削船「グレートシップ・マヤ」。世界最大のサンゴ礁グレートバリアリーフの化石を掘削した。写真左は横山祐典東京大准教授(2010年、横山准教授提供)

 オーストラリア北東部沿岸にある世界最大のサンゴ礁、グレートバリアリーフの沖合を初めて掘削して化石を採取したところ、最終氷期で最も寒かった約2万年前の海面水温は、約1万年前から現在に至る間氷期より5度程度低かったと推定されることが分かった。

 グレートバリアリーフは、寒冷な時代も現在より規模は小さいとみられるが存続したことが判明。その後1万年間で5度の水温上昇は、サンゴにとって厳しかったが適応できたと考えられる。

 東京大学大気海洋研究所の横山祐典准教授らの国際研究チームが2010年春に掘削調査を行った成果で、17日付の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表した。

 しかし、チームメンバーで産業技術総合研究所海洋環境地質研究グループの鈴木淳グループ長は「現代は当時をはるかに上回るペースで温暖化が進んでおり、グレートバリアリーフのサンゴが今後も適応できるかは分からない」と話している。

 グレートバリアリーフは世界遺産で、現在生息するサンゴを傷つける調査は許されない。このため日米欧が主導する統合国際深海掘削計画(IODP)の一環として、主にケアンズ沖とタウンズビル沖の水深40~170メートル程度の地点を慎重に選び、欧州が運用する掘削船「グレートシップ・マヤ」(4850トン)で掘削した。

 採取したサンゴ化石の年代は3万~9000年前。現在の日本沿岸にも生息する「ニオウミドリイシ」の化石について、成分のカルシウムに対するストロンチウムの割合に基づき当時の海面水温を推定した。温暖化に伴うサンゴの種の変遷も分析が進んでいるという。