香川選手、別れの朝に泣き続けた1時間


「大阪の父」C大阪の寮長「お前はきっと成功する」

香川選手、別れの朝に泣き続けた1時間

サッカー日本代表の香川真司選手が「大阪の父」と慕うセレッソ大阪の寮長秀島弘さん=3月28日、大阪市内

 サッカーのワールドカップ(W杯)ブラジル大会の日本代表は14日(日本時間15日)、レシフェでコートジボワールとの初戦を迎える。日本代表の香川真司選手(25)には、「大阪の父」と慕う人物がいる。高校生で厳しいプロの世界に足を踏み入れた当時、親身になって支えてくれたセレッソ大阪の寮長秀島弘さん(75)だ。

 秀島さんは老舗旅館で料理長を24年間務めた後、2003年にセレッソ大阪の寮長となった。06年1月に入寮したのが香川選手。「体が小さく、無口で目立たない子」が第一印象だったという。

 脚光を浴びるのは、一緒に入寮した同期の柿谷曜一朗選手(24)ばかり。入寮当初は食が細く、食事に2時間半もかかる香川選手の姿を見て、ふびんにすら思えた。

 サッカー留学のため、中学から親元を離れていた香川選手。秀島さんには料理人を目指し、15歳で故郷を後にした自分と重なった。

 香川選手もやさしく接してくれる秀島さんを慕うように。「プロが疲れてどうする。走り込め」。秀島さんにスタミナ不足を指摘されると、日課に30キロ走を加え、3年間続けたという。

 09年末にはドイツ1部リーグ、ドルトムントへの移籍を引き留めたことも。シーズン途中に加入しても出番が限られ、本領を発揮できないと考えた。「90分使ったら、どんな監督でもお前にほれ込む」。秀島さんの言葉を信じ、半年後のシーズンオフを待って海を渡った。

 日本をたつ日の早朝、香川選手は寮に立ち寄り、「今から旅立ちます」と頭を下げた。「お前はきっと成功する。俺は信じている」。背中をたたくと、香川選手は胸にしがみつき、空港までの1時間、泣き続けたという。

 今や、代表には欠かせない存在になった香川選手。秀島さんは「たった一人でチームの流れを変える不思議な力を持っている」と、W杯での活躍を信じている。