映画「春を背負って」


山小屋を継いだ青年の物語

映画「春を背負って」

左から長嶺亨(松山ケンイチ)、高澤愛(蒼井優)、ゴロさん(豊川悦司)=©2014「春を背負って」製作委員会

 笹本稜平原作の同名の小説を、木村大作監督が、舞台を奥秩父から立山に移して映画化した。標高3000㍍を超える大汝山に立つ山小屋を拠点として、東に鹿島槍、北に剱岳、西に大日岳、南に槍ヶ岳という、雄大な山々の四季が映し出されていく。

 主人公の長嶺亨(松山ケンイチ)は、山小屋を営む父に育てられたが、社会人になると故郷を出て、東京で金融関係の仕事に就き、トレーダーとしての成績もよかった。ところが父が危篤となり、郷里に着いた時には亡くなっていた。

 母・菫(檀ふみ)は麓で民宿を経営していて、夫の死で山小屋を手放すつもりでいた。葬儀の後、亨が母や山の仲間たちと山小屋を訪れてみると、父の山小屋への思いに触れて、父の後を継ぐことを決意する。

 始めてみると、慣れない山小屋の経営に亨は悪戦苦闘する。そこには父のスタッフで料理を担当していた高澤愛(蒼井優)の姿もあったが、さらに父の友人だというゴロさん(豊川悦司)もやってきて、三人共同の生活が始まる。

 山では遭難事故が起きて、その救助に駆けつけたりするが、3人はお互いを欠かせない家族のような存在と感じていく。

 山の厳しさも美しさも描かれている。これは一種のホームドラマであり、大自然から彼らが力を得ていく、すがすがしい物語だ。(岳)