広がる「陣痛タクシー」、妊婦向けサービス急増
防水シートなどを車両に装備、事前登録で病院まで送迎
「陣痛が始まってからタクシーを呼んでいいだろうか。途中で破水してしまったら…」。妊婦のこうした不安を解消するため、防水シートなどを車両に装備し、研修で出産の専門知識を身に付けたドライバーが、自宅から病院まで妊婦を送迎するタクシーサービスが広がっている。
「陣痛は始まっていますか。行き先の病院に変更はありませんか」。4月中旬の深夜、東京都世田谷区の妊婦からの電話に、オペレーターの女性が応じた。妊婦の自宅とかかりつけ病院の住所は事前に登録済み。付き添いの家族や破水の有無など2、3の質問を終えると、直ちに最寄りの空車を派遣した。
当日、妊婦の元へ向かったのは乗務員の松原文相さん(41)。初めての陣痛搬送で緊張したが、「いつも通り安全に送り届けよう」と気持ちを切り替え、後部座席にシートを敷いた。夫に付き添われて乗車した女性は、時折苦しそうな声を漏らして横たわっていたが、病院で降りる際には「ありがとうございました」と声を掛けてくれた。
全国ハイヤー・タクシー連合会によると、「陣痛110番」「マタニティータクシー」などと呼ばれる妊婦向けサービスは、2012年ごろから急増。タオルや防水シートを装備したり、混乱しかねない妊婦のために料金の後日払いを可能にしたりと、会社によってサービスはさまざまだ。