映画「世界の果ての通学路」


困難な道をたどって学校へ

映画「世界の果ての通学路」

危険が潜む大草原を走って登校する兄ジャクソン(右)と妹サロメ=©2013‐Winds-Ymagis-Herodiade

 小学校や中学校の通学路に焦点を当てた異色の映画だ。フランスドキュメンタリーの最高傑作と言われる。監督は12年間ケニアに通って伝説の部族「マサイ」を映画化したパスカル・プリッソン 。

 映画化のきっかけは、マサイの若者が2時間かけて登校する場面に出くわしたことだった。そして「世界には苦労して学校に通う子供がいるのではないか」と思い立ったという 。

 通学路は日本では平凡な街中の光景だが、世界に目を向けると、大自然の中の困難な通学路が各地のあることに驚かされる 。

 ケニアには猛獣の棲(す)む大草原を突っ切って、15㌔の通学路を登校する兄妹がいる。アルゼンチンには馬に乗ってパタゴニア平原を通って登校する兄妹がいる。モロッコにはアトラス山脈を越えて22キロの山道を4時間かけて登校する少女らがいる。またインドでは足に障害を持ちながら弟たちに支えられて登校する少年がいる 。

 ドキュメンタリー作品なのだが、一つ一つに小さなドラマがある。毎日の通学そのものが冒険の旅なのだ。共通するのは勉学に励もうとする子供たちのひたむきな姿である 。

 彼らは目を輝かせて夢を語る。パイロットになりたい。医師になりたい。獣医になりたい、と。それを強い意志が支えている。先進国の子供たちが忘れてしまった、大切なものを再発見させる作品だ。(佐野富成)