「本当に私でいいのかなあ、夢見ているみたい」


上橋菜穂子さんにアンデルセン賞、日本人は20年ぶり

「本当に私でいいのかなあ、夢見ているみたい」

国際アンデルセン賞の作家賞を受賞し、著書の前に立つ上橋菜穂子さん=25日午後、東京都新宿区

 児童文学のノーベル賞と言われる国際アンデルセン賞作家賞に輝いた作家で文化人類学者の上橋菜穂子さん(51)は25日、東京都内で記者会見し「夢を見ているみたい」と喜びを語った。海外の発表会場から連絡を受けたのは24日深夜。「関係者が悲鳴のような声で伝えてきた」と言う。

 日本人が同賞を受けるのは、まど・みちおさん以来20年ぶり2人目で、「本当に私でいいのかなあ」と謙遜する。

 受賞の要因について、上橋さんは「英語やフランス語などに翻訳されたこと」を挙げた。当初は日本語の壁があり外国で全部読んでもらえることはない、と考えていたという。代表作「獣の奏者」や「守り人」シリーズはその後、アニメにもなって世界を巡った。「多様な文化を持つ人々の姿を描き、多様な世界から来た審査員(の心)に響いたのではないか」と話した。

 子供の頃に祖母から物語を聞かされ、大好きになった上橋さん。「人と人は友人になれるが、国や社会となると難しい。物語は個が作り、(読者が)個人で向き合える」。自身が創作した物語は子供に限定せず、男女、世代を問わず読んでほしいと語る。

 「日本人のものの感じ方が物語で世界に広まれば、コミュニケーション(の道具)になる。これ以上良いことはない」。興味があるテーマは生老病死。3年がかりで取り組む長編は今秋刊行される。