堀江謙一さん、60年後の「太平洋ひとりぼっち」


83歳の海洋冒険家がまた太平洋横断、最高齢単独航海へ

堀江謙一さん、60年後の「太平洋ひとりぼっち」

世界最高齢での太平洋横断に向けた試験航行で意気込みを語る海洋冒険家の堀江謙一さん=2021年12月4日、兵庫県西宮市

堀江謙一さん、60年後の「太平洋ひとりぼっち」

堀江謙一さんの太平洋横断

 1962年に世界で初めて小型ヨットでの単独無寄港太平洋横断を成し遂げた海洋冒険家の堀江謙一さん(83)=兵庫県芦屋市=が2022年3月、またも太平洋横断に挑む。日米両国民を驚かせ、体験記「太平洋ひとりぼっち」が話題となった最初の航海から60年。成功すれば世界最高齢記録となる。

 堀江さんは高校時代にヨットと出会い、23歳だった62年に小型ヨット「マーメイド号」で同県西宮市の港から出航。94日間で約8500キロを横断し、米サンフランシスコに到着した。自由に海外旅行ができる時代ではなく、パスポートを持たない「密航」だったが、当時のサンフランシスコ市長は名誉市民として歓迎した。国内では一時非難も浴びたが、帰国後は一転、時の人となった。

 堀江さんは「部活動の延長みたいな感覚で、世界一広い海をヨットで航海したいという思いだけだった」と振り返る。その後も、275日間かけての単独無寄港世界一周や、足こぎボートでのハワイ-沖縄間横断など数々の冒険航海を重ねてきた。

 今回は原点となる60年前の航海を逆にたどり、サンフランシスコから約2カ月半かけて西宮市を目指す。合板製だったヨットはアルミ製になったが、船体の長さは初代マーメイド号と同じ5・83メートル。水洗トイレや小型キッチンを備え、発電用の太陽光パネルも搭載する。

 積み荷の多くを占めるのは、水200リットルと食料品だ。60年前は灯油コンロを持ち込み、飯ごうで米を炊いたが、今回は湯を加えるだけの「アルファ米」やシリアルなどを食べる予定。本も20~30冊持参し、波が穏やかな時は読書をして過ごすつもりだ。

 寝る場所は2カ所あり、船の傾きによって変える。油断すれば転覆の危険もあるが、堀江さんは「揺りかごのようで、ぐっすり眠れる」と話す。パソコンや衛星携帯電話も使えるため、家族と毎日連絡を取るという。

 「60年たっても海は変わらない。年齢は経験でカバーできる」。83歳での挑戦について、堀江さんはあくまで前向きだ。「ヨット以外の趣味はない。100歳まで航海は続けるつもりだが、元気なうちにやろうと思った。健康さえ維持できれば問題ない」と笑顔で話した。