WHO特別会合が開幕、パンデミック条約を議論
新変異株が流行、ワクチンや治療薬の公平な分配に再注目
世界保健機関(WHO)総会の特別会合が29日、ジュネーブで対面とオンラインの混合方式で開幕した。新型コロナウイルスでの混乱を教訓に、次の世界的規模の感染症に備えてワクチンや治療薬の公平な分配などを明文化する「パンデミック(世界的大流行)条約」について議論する。会合は12月1日まで。
新型コロナの新たな変異株「オミクロン株」は、ワクチンや治療薬の普及が遅れる南部アフリカを中心に広がっている。公平な分配の必要性が改めて注目されそうだ。ただ、米国など慎重姿勢の国も多く、制定までに数年はかかる見通し。
WHOのテドロス事務局長は演説で、オミクロン株について、感染力などが強まっているかは不明だが、パンデミックとの戦いが「終わっていないことを改めて認識させるものだ」と強調した。会合には複数の首脳もオンラインで参加。ドイツのメルケル首相は「ウイルスに国境はない」と述べ、国際協調の重要性を訴えた。
パンデミック条約構想は、英仏独をはじめとする欧州諸国が主導。南アフリカや韓国、タイなども支持している。ワクチンなどの分配に加え、情報共有の徹底も目指す。5月の総会で議論したが、法的拘束力の発生を警戒する米国やロシア、中国などが賛同せず、11月に特別会合を開いて改めて議論することになっていた。(ウィーン時事)