兵庫・兄弟殺害、動機解明が捜査の焦点に


放火判明から1週間、逮捕の伯父に家族と接触ほとんどなく

兵庫・兄弟殺害、動機解明が捜査の焦点に

小学生の兄弟が死亡した住宅火災の現場に供えられた花束=25日、兵庫県稲美町

 兵庫県稲美町で住宅が全焼し、小学生の兄弟が死亡した火災で、県警が放火と断定し捜査本部を設置してから28日で1週間。殺人容疑などで逮捕された伯父の無職松尾留与容疑者(51)は、兄弟の両親が不在になるのを待ちガソリンを使って火を付けたとみられる。強い殺意や計画性がうかがえるが、同居する家族とはほとんど接触がなかったという。凄惨(せいさん)な事件の背景に何があったのか。県警は動機の解明を続ける。

 近所の住民らによると、全焼した住宅は松尾容疑者と、妹に当たる兄弟の母親の実家だった。同容疑者は長男で、もともとこの家に住んでいたが、15年ほど前に妹家族が移り住み、入れ替わるように大阪に引っ越した。生活に困窮し、24日に身柄を確保された大阪市北区の公園で路上生活することもあったという。

 数年前に体調を崩して実家に戻り、妹家族と計5人で同居。ただ、仕事はせず自室にこもりがちで、家族との接触もほとんどなかった。土地は同容疑者が相続しており、妹に「働きたくない。財産を全部譲るから生活保護の申請をしてほしい」と訴えたこともあった。

 松尾容疑者を子供のころから知る70代男性は「静かで目立たない子。こんなことをするなんて考えられない」と首をかしげる。

 火災は19日深夜に発生。2階建て住宅が全焼し、焼け跡から小学6年松尾侑城君(12)と弟の同1年真輝君(7)の遺体が発見された。出火したのは父が母を迎えに車で出た直後だった。

 行方不明になっていた松尾容疑者は5日後、約50キロ離れた公園で、捜査員に身柄を確保された。所持金は数千円だったという。逮捕後の調べに容疑を認め、「ガソリンを使って火を付けた」などと供述。倉庫から農機具用のガソリンの携行缶が発見され、布団にまいたとみられる。

 亡くなった兄弟は野球好きで、家の前でキャッチボールをする姿がよく目撃されていた。両親のものとみられるフェイスブックは家族でキャンプや旅行に出掛ける投稿であふれていた。

 住宅の前には事件後、花束が供えられ、友人とみられる少年たちが手を合わせる姿も見られた。近くに住む男性(72)は「2人のためにも真実を明らかにしてほしい」と話した。