「生きるの苦しい」子育て家庭の困窮深刻


体温計壊れ熱も測れず、支援団体が新政権に救済求める

「生きるの苦しい」子育て家庭の困窮深刻

子供の貧困対策に取り組むNPO法人に届いた支援先の家庭からの手紙。子供の字で食料支援に対する感謝がつづられている(NPO法人キッズドア提供)

 新型コロナ禍で収入や貯蓄を減らし、日々の食事もままならない子育て家庭が増えている。岸田文雄首相は支援強化を急ぐ方針だが、衆院選を控え、実現の時期は見通せない。支援団体からは、臨時給付金や児童手当の拡充などの速やかな実施を求める声が上がる。

 「食品、衛生用品、交通費もなく自家用車もない。体温計が壊れて熱も測れず、もう生きるのが苦しい」。子育て家庭の貧困対策に取り組むNPO法人「キッズドア」(東京都中央区)には、こうした切実な訴えが日々寄せられている。同法人が食料を支援した家庭を対象に経済状況を調査したところ、6割超の世帯が年収200万円未満と回答。貯蓄額が10万円を下回る世帯が全体の半数を占めた。

 渡辺由美子理事長は「10年以上、貧困支援に携わってきたが、こんなにひどい状況は初めて」と嘆息。「新政権には、子育て家庭への速やかな現金給付とともに、給付付き就労支援のような困窮者を中間層に押し上げる枠組みもぜひつくってほしい」と期待を寄せた。

 ひとり親世帯を支援するNPO法人「リトルワンズ」(杉並区)では、コロナ禍の前後で食料の援助を求める相談が3倍に増えた。「シングルマザーがどんどん仕事を失っている」。小山訓久代表理事はそう危機感を募らせ、「新政権は民間と連携して制度の問題点を解消し、スピードと実効性のある政策を打ち出してほしい」と訴える。

 千代田区のNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」にも、「コロナ禍の影響で仕事を失った」「カードローンの借金があり、公的支援が受けられない」といった相談が相次ぐ。特に未婚の母親や、離婚が成立していない「実質的ひとり親」は、養育費や児童手当を受け取れず、困窮しやすいという。同法人事務局の小森雅子さんは「単発の給付金では借金返済に消えてしまうという世帯が多い。コロナ禍の間だけでも、継続的に受け取れる手当の充実をお願いしたい」と語った。