北海道でヒグマが相次ぎ市街地に、被害過去最多


保護施策転換で人への警戒心薄れる、駆除体制を強化へ

北海道でヒグマが相次ぎ市街地に、被害過去最多

住宅街に現れ、逃げ回ったヒグマ=6月18日、札幌市東区


 
 北海道で今年、ヒグマの出没が相次いでいる。市街地に現れるケースも目立ち、襲われた死傷者数は過去最多となった。人への警戒心の薄いヒグマが増えているとみられ、冬眠前の10月にかけては、餌を求め街中に出てくる可能性もある。自治体は駆除体制の強化など対策に乗り出した。

 今年の道内のヒグマによる死傷者は11人で、最多だった1964年の8人を上回った。道警によると、8月末までの目撃情報は1600件を超え、現在の集計方法が始まった2015年以降で最も多い。

 道は60年代から駆除事業を積極的に進めていたが、個体数の激減から89年に廃止。保護施策に転換した結果、近年生息数が増加し、分布域も広がっている。道立総合研究機構の間野勉専門研究主幹は「従来、ヒグマは駆除を恐れて人に近づかなかったが、近年は警戒心の薄いヒグマが増え、人の生活圏周辺に現れている」と分析する。

 札幌市では今年6月、市街地で4人がヒグマに襲われた。これを受け市は9月にマニュアルを改定し、市街地出没時には、人への被害がなくても危険性が高いと判断すれば駆除できるようにした。

 侵入を防ぐ対策も急ぐ。ドローンから音を出して追い払うほか、人工知能(AI)搭載のカメラを河川敷に設置し、侵入経路を把握して出没を阻止する計画を進めている。

 札幌市周辺の8市町村などは、メーリングリストを導入する方針。自治体間をまたいで移動するヒグマに対応するため、目撃情報を共有して駆除や追い払いで連携する。道は、インターネット交流サイト(SNS)での目撃情報発信を強化し、住民向けの緊急速報メール導入も検討する。

 道環境局の担当者は「秋はヒグマの動きが活発になり、北海道内ではどこでも出合う可能性がある。出没情報を積極的に活用して、遭遇を避けてほしい」と注意を呼び掛けている。