ウルフ・アロン、無尽蔵のスタミナで「3冠」


100キロ級の金は井上監督以来の快挙、最高のはなむけに

ウルフ・アロン、無尽蔵のスタミナで「3冠」

柔道男子100㌔級決勝で金メダルを獲得し、喜ぶウルフ・アロン(手前)=29日、日本武道館(時事)

ウルフ・アロン、無尽蔵のスタミナで「3冠」

柔道男子100㌔級決勝で攻めるウルフ・アロン(左)=29日、日本武道館(時事)

 男子で8人目の快挙。既に世界選手権、全日本選手権を制していたウルフが、25歳にして五輪の金メダルもつかみ「3冠」を遂げた。「歴史に(名を)刻むことが目標だった。それを達成できた」。涙ながらに畳を下り、自分の前に3冠を果たした鈴木桂治コーチと喜びを分かち合った。

 決勝の相手、趙グハムには2019年の世界選手権準々決勝で敗れており、苦手意識もあった。2年前に食った一本背負い投げに最大限の警戒を払いながら、前に出続けた。

 試合は延長へ。「接戦になればなるほど、僕の持ち味が出てくる」。時間がたつにつれ、オオカミのような眼光はむしろ鋭くなった。試合開始から9分半すぎ、大内刈りで豪快に一本を奪い、両腕を突き上げた。

 米国出身の父を持つ。中学時代、稽古で勝てない後輩がいて「屈辱的な投げ方」をされていた。少しでも強くなろうと早朝のランニングを自らに課したのが無尽蔵のスタミナの源流。高校時代は都内の実家から千葉の東海大浦安高まで自転車で通い、足腰も自然に鍛えられた。さらに学校では午前6時すぎから走り込む徹底ぶり。延長の戦いに絶対的な自信があるのもよく分かる。

 近年は左右の膝のけがに苦しんできた。五輪が1年延期されても万全の状態には戻らず、前日には痛み止め薬を飲んだ。「自分を信じるだけ」。不安を振り払い、自らを鼓舞しながら4戦を勝ち抜いた。

 100キロ級の日本勢の金メダルは、2000年シドニー五輪の井上康生男子監督以来。やはり3冠達成者で、東海大の先輩にも当たる監督は、五輪後に9年の任期を終える。「しっかり恩返しできたかな」。最高のはなむけになった。