競泳の本多灯選手、大舞台を「誰より楽しむ」
男子200mバタフライで銀メダル、素直さを武器に大仕事
「誰よりも楽しもう」。競泳男子200メートルバタフライの本多灯選手(19)=ATSC・YW=。決勝に進出した選手中、準決勝通過タイムは最下位だったが、前評判を覆しての銀メダル獲得。何度もガッツポーズし、客席のチームメートらにピースサインを送った。
負けず嫌いで、自分よりタイムの速いライバルが隣にいると、「獲物を狙うように燃える」タイプ。小学生でジュニアオリンピックに出場し、中学3年で出場した全国大会では2位に入った。だが中学生から指導するコーチによると、特別目立った選手ではなかった。
中学1年時の合宿でのこと。宿泊先ではしゃぐ姿に、コーチが「ルールを守らないなら帰ってもらう」と注意した。額面通り受け取り、荷物をまとめ帰り支度を始めた本多選手を、慌てて引き留める事態に。「なんて素直なんだと思った。今では笑い話です」と語る。その素直さでコーチの教えを吸収し、一つ一つ階段を上るように五輪の舞台へたどり着いた。
27日の準決勝ではタイムが伸びず、「油断した」と表情を曇らせた本多選手。だが、コーチによれば、苦境に直面し、冷静になったときの勝負強さが強み。なぜなら「(成功が続くと)調子に乗ってしまうから」。
「金メダル候補を倒し、楽しもう」。決勝ではクリシュトフ・ミラク選手=ハンガリー=を目標に定めた。強いライバルの存在に燃えた19歳は、大本命には後れを取ったが自己ベストを更新した。
幼稚園児の頃から憧れた五輪の舞台。「ちやほやされたいので頑張りたい」とちゃめっ気をのぞかせていた新星は、持ち前の素直さを武器に、大きな仕事を成し遂げた。