孤島のふたりの灯台守が織りなすスリラー作品
モノクロが与えるほどよい緊張感、映画「ライトハウス」
1890年代、ニューイングランドの孤島に2人の灯台守がやって来る。4週間に渡り、灯台と島の管理を任せられていた。しかし、ベテランのトーマス・ウェイク(ウィレム・デフォー)と未経験の若者イーフレイム・ウィンズロー(ロバート・パティンソン)は、そりが合わず初日から衝突する。そんな、ある日、嵐がやって来る。2人は島で孤立状態になる。しかし、その嵐は2人を運命を狂わせていく。カラーでなくモノクロという映像手法が作品全体にほどよい緊張感を与えている。
明と暗、ほのかな明かりのなかで浮き上がる、ふたりの灯台守の顔の表情などは、古き良き映像美を思い起させ懐かしくもある。
この作品の物語のベースは、1801年にイギリス・ウェールズで実際に起きた事件を盛り込んでいる。
この事件は、ウェールズのスモールズ灯台で起きたもので、ハウエルとグリフィスという2人の灯台守のうちグリフィスが、事故により亡くなってしまう。しかし、ハウエルは勝手に死体を処分することで当局から、殺人を問われることを恐れ、腐敗していく死体とともに数カ月過ごすこととなった。
そして職務から解放されたとき、ハウエルの精神状態は崩壊していた。この件を重く見た当局は、これ以後、2人から3人に変更したというものだ。
ほぼ映画は、ウィリアム・デフォーとロバート・パティンソンの2人だけ。ふたりの心理描写をモノクロームの光(白)と影(黒)、そして音という表現を通してじわじわとくる怖さを演出している。
監督は、ロバート・エガース。
7月9日よりTOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー。
(佐野富成)