タイ・プーケットで接種済み入国者の隔離を免除
久々に外国人客の姿、観光業関係者から期待と不安の声
タイ南部のリゾート地プーケットで1日から、新型コロナウイルスワクチンの接種を済ませた入国者を隔離なしで受け入れる取り組みが行われている。欧米や中東から少しずつ旅行者が戻り始め、観光業関係者は「復興につながる」と胸をなで下ろす。一方、到着した外国人の中に陽性者が見つかり、感染再拡大を招きかねないと懸念する声も上がっている。
タイは入国者に14日間の隔離を義務付けているが、観光客の激減で低迷する経済の再建に向け、プーケットに限り、ワクチン接種を条件に隔離を免除した。入国者はプーケットで14泊すれば、自由にタイ国内を移動できる。政府はプーケットに続き、10月中旬までに全国で実施する計画だ。
9日までの入国者は3287人。南部のカタ・ビーチでジョギングしていたスイス人教師トーマスさん(55)は2週間過ごした後、湾を挟んでプーケットと向かい合うクラビに3週間滞在の予定。「プーケットは3度目。今回は人が少なくて静かに楽しめる」とくつろいだ様子で話した。
タイ政府はプーケットで優先的にワクチン接種を進め、観光業関係者は全員が済ませた。プーケットの1日当たりの新たな感染者は隔離免除後も10人以下に抑えられ、旅行者の受け入れによる感染拡大は起きていない。
高級ホテル「デュシタニ・ラグーナ・プーケット」のプラチューム支配人(57)は「実施されなければ国内市場しか頼れず、極めて低い稼働率にとどまっていた」と隔離免除を歓迎。「外国人観光客が戻れば、ドミノ効果で他県の他業種の収入も増える」と全国への波及に期待を示した。
これに対し、幹線道路沿いでパイナップルを販売するプラニーさん(47)は「新たな感染が心配。それでもお金が必要だから受け入れざるを得ない」と複雑な胸の内を明かす。ゴム農園経営のバンマットさん(54)は「ロックダウン(都市封鎖)にならないよう新規感染者が増えたら隔離免除を見直してほしい」と語った。(プーケット(タイ)時事)