ナイル川ダムめぐる対立、焦り強めるエジプト


エチオピアは貯水を再開、地域紛争でさらに解決困難に

ナイル川ダムめぐる対立、焦り強めるエジプト

大エチオピア・ルネサンスダム=2020年7月、グバ近郊(AFP時事)

 ナイル川上流でエチオピアが建設を進める巨大ダムをめぐり、下流域への水量減少を懸念するエジプトとスーダンが国際的な調停を求めている。エチオピアは5日、昨年に続き今年もダムの貯水を開始したことをエジプト側に通告。国連安保理が8日にダム問題を協議する予定だが、事態収拾につながる可能性は低い。エジプトは焦りを強めている。

 建設中の「大エチオピア・ルネサンスダム」はアフリカ最大で、総貯水量は世界有数の740億立方メートル。経済発展に伴う電力不足に悩むエチオピアは、ダムによる発電能力の増強が急務だ。昨年7月には「第1段階の貯水完了」を宣言し、今年はさらに増やして全面稼働を急ぐ方針を示している。

 一方、ナイル川に水資源の大半を依存するエジプトとスーダンは、一方的なダム建設に猛反発。水の利用に関する法的拘束力のある合意を要求しているが、エチオピアは拒んでいる。アフリカ連合(AU)が協議仲介を試みたが、双方の主張の隔たりが大きく停滞している。

 さらに解決を難しくしているのは、エチオピア北部ティグレ州での紛争だ。アビー首相が昨年から軍事作戦を主導したが、少数民族ティグレ人の武装勢力が6月下旬に州都メケレを連邦政府から奪還。アビー氏は劣勢を強いられている。

 スーダンのヤセル灌漑(かんがい)・水資源相は米ブルームバーグ通信に対し「『自国民を殺すな』『ダムに関して隣国と協議せよ』と世界中が訴えているのに、なぜ自分が常に正しいと思い込むのか」とアビー氏の対応を批判。国内の支持を高めるために外交面で強硬な対応を取っていると指摘し「政治的ダメージへの懸念がダム問題を複雑にしている」と語った。(カイロ時事)