「政局の秋」をにらみ、自民党で議連が続々発足


安倍・麻生・甘利の自民「3A」と二階幹事長対峙の構図

「政局の秋」をにらみ、自民党で議連が続々発足

「新たな資本主義を創る議員連盟」で、あいさつする自民党の安倍晋三前首相(左から2人目)と、発起人の岸田文雄前政調会長(同3人目)ら=11日午後、衆院議員会館(時事)

 自民党で、秋に想定される閣僚・党役員人事をにらんだ主導権争いが活発化してきた。表面上は特定の政策課題を掲げた議員連盟の相次ぐ発足だが、顔触れから浮かび上がるのは、安倍晋三前首相と麻生太郎副総理兼財務相の連合に甘利明税調会長を加えた「3A」と、菅政権で実権を握る二階俊博幹事長が対峙(たいじ)する構図だ。二階氏の党運営への強い不満が背景にあり、最大の焦点は幹事長ポストの争奪だ。

 11日、衆院議員会館に所属議員約150人を集めて開かれた「新たな資本主義を創る議員連盟」の設立総会。会長に就いた岸田文雄前政調会長が安倍、麻生、甘利各氏の最高顧問などへの就任を報告。続いてあいさつした安倍氏は「瑞穂の国にはふさわしい資本主義がある」と無難な発言に終始したが、麻生氏は「政策より政局の顔がやたら見える」と、「戦闘モード」を隠そうとしない。甘利氏は「岸田氏の議連はトリプルAの格付け。極めて幸先がいい」と3Aの結束を誇示した。

 党内では最近、議連を通じて3Aが存在感を示す場面が顕著だ。5月21日には「半導体戦略推進議員連盟」が発足し、安倍、麻生両氏が最高顧問、甘利氏が会長に就任。今月8日の「日豪国会議員連盟」の会合では、安倍、麻生両氏が最高顧問、甘利氏が顧問に就いた。

 安倍氏と甘利氏は11日、「未来社会を創出するバッテリー等の基盤産業振興議員連盟」も発足させた。岸田氏の議連の総会のさなかに党本部で設立総会を開くという慌ただしさだ。

 3Aの動きについて、党内では「閣僚・党役員人事に向けた発言力確保が狙い」(ベテラン議員)との見方がもっぱらだ。3人は菅義偉首相の後ろ盾として存在感を放つ二階氏と反目してきた経緯があり、ある閣僚経験者は「二階氏から幹事長ポストを奪い返したいのではないか」とみる。

 二階氏も黙っていない。腹心の林幹雄幹事長代理が8日、官邸に首相を訪ね、二階氏を会長とする「自由で開かれたインド太平洋推進議員連盟」を15日に設立すると報告。これと前後して安倍氏に最高顧問就任を依頼し、同意を取り付けた。二階氏は安倍氏が首相時代、中国の海洋進出に対抗するため唱えた構想を議連のテーマに据え、3Aの一角をしたたかに切り崩した格好だ。

 これに対し、甘利氏は9日のテレビ番組収録で、二階氏が親中派であることを念頭に「二階氏が(会長に)座って大丈夫か。もろにぶつかる」と露骨に不快感を示した。

 両勢力のせめぎ合いの特徴は、内閣支持率の急落をよそに、双方とも現時点では首相支持を明確にしていることだ。甘利氏は「ポスト菅」をうかがう岸田氏から議連参加を要請され、「本人が代わりたいと言わない限り、3Aは菅首相を支える。分かっているか」と念押ししている。

 ただ、首相自身は政権運営を二階氏に負うところが大きい。政権が依拠する二つの勢力で「秋に向けて引いたり突いたりのさや当てが続く」(自民党関係者)不安定な状況の中、首相は総裁再選に向けて難しいかじ取りを迫られる。