「殺処分ゼロ」を目指す犬好きの颯太と涼介
映画「犬部!」、殺処分めぐる実話を基に制作
「殺処分ゼロ」を目指すことを、公言してやまない花井颯太(林遣都)、その花井の姿を優しい眼差(まなざ)しで見詰める柴崎涼介(中川大志)。2人は、超がつくほどの犬が大好きで殺処分されてかけている犬を引き取っては育てていた。
大学の獣医学部内でも、颯太の存在は異質で動物を殺すことなく、研究論文を仕上げるなど、身をもって「殺処分をゼロ」を実践していた。
一方、涼介は動物医学のためなら殺処分も仕方のないことと割り切っていた。
そんな微妙で小さなズレが大学卒業後、2人を決定的に引き裂く亀裂になっていく。
原作は、ノンフィクション作家・片野ゆかさんの著書『北里大学獣医学部 犬部!』を基に制作された。
2004年頃に青森県十和田市の北里大学に実在した動物愛護サークルがモデルとされている。林と中川が主演となっているが、間違いなく、もう一人の主役たちは動物たちだ。
林と花子役のちえ、中川と太郎役のきぃ、いずれも犬だが、それぞれに愛嬌があり、ひとつひとつのしぐさがじつに愛らしく、思わず「健気だなあ」と声に出したくなるほどだった。
動物愛護をめぐる問題は、非常に難しいテーマをはらんでいる。実際、獣医師で殺処分を嫌い保護に動く医師もいる。その一方で、殺処分は致し方ない、と割り切る医師もいる。
この割り切りたくても、割り切れず精神的な負担となってしまい破綻してしまうという医師の姿を中川が演じている。
見終わった後、改めて動物愛護に関する難しさを感じる一作だった。林、中川のほか、大原櫻子、浅香航大らが出演。監督は篠原哲雄がメガホンを取った。7月22日より全国公開予定。
(佐野富成)