高齢者ワクチン、申し込みが殺到し各地で混乱


有料で「予約代行」業者も、「抽選望ましい」と専門家

高齢者ワクチン、申し込みが殺到し各地で混乱

高齢者施設で新型コロナウイルスワクチン接種を受ける入所者=4月12日、京都市(時事)

高齢者ワクチン、申し込みが殺到し各地で混乱

新型コロナウイルスワクチンの接種に便乗したトラブルに注意を呼び掛ける国民生活センターのホームページ(時事)

 高齢者対象の新型コロナウイルスワクチン接種が本格化する中、先着順に予約を受け付ける自治体で申し込みが殺到し、システムがパンクするなどトラブルが相次いでいる。有料で予約を代行する業者も現れており、専門家は「混乱を避けるため抽選が望ましい」と訴える。

 すでに集団接種の予約が始まった自治体では、開始直後から専用サイトやコールセンターにアクセスが集中し、システムに不具合が発生。通信大手各社は10日、混雑回避のため自治体の受け付け番号への通話を制限した。大阪府茨木市はインターネットに不慣れな人を想定し予約窓口を用意したが、徹夜覚悟の高齢者が窓口に殺到。市は同日、「健康や安全を損なう」として窓口予約を中止した。

 こうした混乱に乗じ、有料の予約代行業者も現れた。ツイッター上で予約代行を募る業者は、これまでに全国で200件以上を処理したといい、「1000円で、基本的に後払い。高齢者の子どもの申し込みが多い」と話す。

 詐欺まがいのケースもある。「ワクチン接種の予約が大変なので、2000円で請け負います」。4月26日、福島県会津若松市に住む80代女性に、突然電話がかかってきた。市によると、「日本赤十字会」と架空の団体を名乗ったという。女性は不審に思い、市に相談し依頼しなかった。

 国民生活センターによると、「10万円を振り込めばワクチンの接種順位を上げる」とスマートフォンに通知が届いたり、「中国製ワクチンを数万円で接種できる」と電話があったりしたとの相談が寄せられ、同センターが注意を呼び掛けている。

 一方、先着順から抽選方式に切り替えた自治体もある。福岡県嘉麻市は、75歳以上を対象とした接種予約を6月分から抽選にした。今月20日まで電話や郵送、電子メールで受け付けるという。

 慶応大の栗野盛光教授(ミクロ経済学)は「今は親戚や子どもが代わりにアクセスしてサーバーがダウンしている状態。競争が起きて高額な代行業者が出てくると、公共サービスの公平性に反する。抽選であればこうしたリスクを軽減でき、無用な混乱を避けられる」と話している。