孔子学院、日本政府も警戒を強めよ


 米国の大学では、中国政府が中国語学習や文化紹介のために世界中に設置している教育機関「孔子学院」を閉鎖する動きが続いている。

 孔子学院は運営の不透明さが指摘され、スパイ活動に関与しているとの疑いもある。閉鎖されるのは当然だ。

米国で学問の自由脅かす

 中国政府は2004年に最初の孔子学院をソウルに設立し、現在は日本を含む世界各国で500カ所以上を開設している。最も多いのが米国で、今年2月時点で100カ所以上ある。

 中国は普及を急ぐため、時間がかかる政府間協定ではなく、自由裁量で開設できる「大学間協力」という方式を採用している。しかし孔子学院は表向きは文化センターとされているが、米国では対中政策をめぐる議論に影響を及ぼすためのプロパガンダ機関、スパイの活動拠点になっているとみられている。

 米連邦捜査局(FBI)のレイ長官は昨年2月、孔子学院がスパイ活動に関わっている疑いで調査対象となっていると議会で証言した。事実であれば、孔子学院は米国の安全を脅かしかねない。

 昨年8月に成立した国防権限法には、孔子学院を設置する大学は、国防総省が「免除」を認めない限り、同省が資金を提供する中国語プログラムを運営できないとする条項が盛り込まれた。同省は「国益にならないと判断した」として、大学側からの13件の免除申請をすべて拒否したという。

 スパイ疑惑を踏まえれば、適切な判断だと言えよう。この結果、昨年12月以降に少なくとも6大学が孔子学院との契約解除を発表した。

 米上院国土安全保障・政府問題委員会の常設調査小委員会は今年2月、この10年間で1億5000万㌦(約160億円)以上の資金が中国から孔子学院を設置する大学に提供されたとする報告書を公表した。このうち、約7割近くの大学が米教育省の規定に反して国への報告義務を怠っていたという。

 大学が孔子学院と結ぶ契約の幾つかは「中国の法律を遵守(じゅんしゅ)」することを大学に義務付け、契約内容を公開することを禁じている。こうした運営の在り方は極めて不透明だと言わざるを得ない。報告書が「米国内で存続させるべきではない」としているのも理解できる。

 孔子学院は中国の政府機関「漢弁」の監督下にある。豊富な資金を提供することで学習内容を管理し、天安門事件やチベット・ウイグル問題などの議論をタブー視している。

 教師たちは中国について自由に発言ができないように制約を課されている。民主主義国の米国内でも、孔子学院では学問の自由が脅かされている状況を直視すべきだ。

国益重視した対応を

 日本には現在、14の私立大に孔子学院が設置されている。だが、文部科学省も十分に実態を把握できていないという。米国での閉鎖の動きを念頭に、政府は警戒を強める必要がある。

 大学側も、寄付や利益を得ることに盲目的であってはなるまい。日本の国益を重視した対応が求められる。