米台定期対話、地域の安定へ連携強化を期待


 台湾外交部(外務省)は、インド太平洋地域で自由・民主や人権といった価値観を広めるため、米国と定期対話を始めると発表した。

 米国としては覇権主義的な動きを強める中国を念頭に、日本やインド、オーストラリアなどと進める「自由で開かれたインド太平洋」戦略に台湾も組み込む狙いがあろう。地域の安定と繁栄に向け、米国と台湾の連携が強まることを期待したい。

台湾との統一目指す中国

 定期対話は、年に1回のペースで持ち回りで開催。第1回はインド太平洋諸国の関係者を招き、9月に台北で行う。米側は国務省の民主・人権や労働政策担当のベテラン官僚を派遣する計画だ。

 「自由で開かれたインド太平洋」は、安倍晋三首相が2016年8月にケニアで開かれたアフリカ開発会議(TICAD)で提唱したものだ。首相は、この地域を「力や威圧と無縁で、自由と法の支配、市場経済を重んじる場として育てる」と演説した。背景には、シルクロード経済圏構想「一帯一路」を掲げて東・南シナ海やインド洋で海洋権益拡大を図る中国の存在がある。日本としてはシーレーン(海上交通路)の安全を確保しなければならない。

 中国は中台統一を目指し、台湾への圧力も強めている。中国の李克強首相は今月開かれた全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の政府活動報告で、習近平国家主席が今年1月の演説で統一に向け武力行使も排除しないとした台湾政策を「全面的に貫徹・実践する」と訴えた。

 習氏はこの演説で「一国二制度」による統一の具体案を検討するとし、「台湾同胞の私有財産、宗教・信仰、合法的な権益は十分に保障する」と強調した。しかし、この言葉を真に受けることはできない。

 一国二制度の下で「高度な自治」が認められているはずの香港では、昨年3月の立法会(議会)補欠選挙で中国の意に沿わない勢力が締め出されるなど政治的圧力が強まっている。台湾の蔡英文総統が、中国の統一攻勢に反発するのは当然だ。台湾の民主主義を踏みにじることは許されない。

 一方、トランプ米政権は昨年3月、米国と台湾の高官往来を法的に裏付ける台湾旅行法を成立させた。9月には、台湾と断交し、中国と国交を結んだカリブ海の島国ドミニカ共和国、中米のエルサルバドル、パナマの3カ国に駐在する米国の大使や臨時代理大使を召還するなど、台湾を国際的に孤立させようとする中国の外交攻勢に対抗する姿勢を示している。

 今回の米台定期対話もこの一環だと言える。人権について論議すれば、国内で民主活動家や少数民族の人権を抑圧する中国への圧力にもなろう。

日本も関与を強めよ

 日本にとっても、台湾をめぐる情勢は人ごとではない。仮に中台が統一されれば、中国の脅威は格段に高まろう。中国が台湾に武力行使する際、台湾と共に沖縄・先島諸島に侵攻するとの見方もある。その意味で、日米台の連携も極めて重要だ。日本は米国と共に台湾への関与を強めていく必要がある。