都LGBT条例案、家族破壊に利用される
東京都は定例議会に、いわゆる「性的少数者(LGBT)」に対する差別禁止を盛り込んだ「オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念実現のための条例」案を提出した。成立すれば、公布と同時(一部は来年度)に施行される。
人権尊重は当然だ。しかし、表現の自由を侵す恐れがあるなど重大な欠陥を抱える上、LGBT運動による家族破壊に利用される危険があり、条例案には到底賛成できない。
新たな人権侵害の危険も
五輪憲章に謳(うた)われた人権尊重の理念を基本とする条例案の柱の一つは、性自認および性的指向を理由とする「不当な差別の解消」を謳っていることだ。しかし、それが何を指すのか曖昧であり、運用次第では新たな人権侵害の危険性をはらむ。最も危惧されるのは、思想・信条、そして表現の自由の侵害である。
11条では「不当な差別的な言動が行われることを防止するため、公の施設の利用制限について基準を定める」としている。しかし、これでは、LGBT活動家たちが主張する「同性婚」の制度化に反対する立場の講演会などの利用が禁止されたり、同性同士の性行為を「罪」と考える宗教団体の活動が制約されたりしかねない。
また、LGBTなどに対する差別解消に向け、啓発・教育にも力を入れるとしていることから、条例の成立は都立や都下の公立学校の教育内容にも影響を及ぼす。そうなれば深刻な問題が生じるのは必至だ。
性愛や性的欲求に対する考え方が家庭によって違う中で、学校が家庭教育を阻害する可能性もあり、子供は混乱するであろう。子供の教育に第一義的責任を負うのは保護者だと定める教育基本法とどう整合性をつけるのか。
都の条例案は「性的指向」「性自認」「多様な性」などの文言を使っていることでも分かるように、「人権尊重の理念」に純粋に向き合ったものというより、現在、社会に拡大するLGBT運動の影響を受けたものであることは間違いない。
LGBTという造語や前述の文言は、男女の区別や家族制度を支える性倫理・道徳を壊すことを狙う運動論と密接に関わっている。その到達点は同性婚だ。条例案も、この運動の目的達成のために利用されるだろう。都議会は五輪の政治利用を見抜くべきである。
条例案提出に当たって、小池百合子知事は「持続可能なより良い未来のために」と述べた。ならば、社会を担う次世代を生み育てる家庭を強くする施策に取り組むべきである。
都だけでなく、日本全体で、世代の継承と社会の持続的発展という視点を欠いたままLGBT問題が論じられるという憂うべき状況にある。これはLGBT運動の巧妙さだ。
若者に結婚の意義伝えよ
家族は社会の基盤である。同性婚の実現を狙い、男女の役割をはじめとした伝統的な価値観を崩そうとする勢力に利用される危険性の強い条例を制定するよりも、家族の核となる結婚の意義を若者に伝える施策の方がどれほど重要か。条例案を審議する都議に考えてほしい。