ゲーム依存症、治療体制の拡充が急がれる


 世界保健機関(WHO)は、オンラインゲームなどへの依存状態を新たに病気と正式に認定した。

 特に未成年が依存に陥りやすく、対策が急務だ。

不登校や退学のケースも

 WHOは疾病に関する国際的な分類を約30年ぶりに大幅改定し、ゲーム依存は麻薬使用やギャンブルの常習行為による疾患の項目に加えられた。①ゲームの時間や頻度をコントロールできない②日常生活でゲームを最優先する③こうした行動が1年以上続く――などが当てはまると「ゲーム依存症」と診断される可能性があるとしている。

 ゲームをする時間が長くても、必ずしも依存症というわけではない。WHOは「依存症はゲーム愛好家の2~3%にすぎない」と強調している。

 しかし、全世界のゲーム人口は23億人と推計されている。したがって、この中の4000万~7000万人は依存症だという計算になる。極めて深刻な事態だ。

 国内では、インターネット依存が成人421万人、中高生52万人に上る。中高生の場合、ほとんどはゲーム依存とみられている。ゲーム以外のことは何も手につかず、不登校になったり、学校を退学したりするケースもある。体力が低下し、うつ病や自殺のリスクも高まるという。これでは心身の健やかな成長は望めない。

 ネットは使い始める年齢が低いほど、依存症になる確率が高くなる。特にゲームは勉強やスポーツに比べて簡単に達成感が得られるため、依存に陥りやすいとも言われる。

 ゲームをしない友人との関係が絶たれることもあるという。孤立して健全な人間関係を構築する能力が失われる恐れも出てくる。過激な描写の残虐ゲームなどの影響も心配だ。スマートフォンを取り上げたり、ネットを遮断したりすると、暴力を振るうなどの問題行動を起こすことも多い。

 ゲーム依存症は、スマホや高速回線の普及率が高い東アジアで特に深刻化している。韓国では2002年、ネットカフェでゲームをしていた20代男性が、長時間同じ姿勢でいることで引き起こされるエコノミークラス症候群で死亡した。こうした出来事を教訓に、韓国は16歳未満がオンラインゲームで遊ぶ時間を制限する制度を導入するなどの対策を取っている。

 菅義偉官房長官は、ゲーム依存症について「まずは実態の調査・研究を行い、結果を踏まえ対応していきたい」と述べた。日本では相談できる医療機関も専門医も少ない。治療体制の拡充が急がれる。

家族の絆で予防したい

 治療と共に重要なのは予防策だ。子供がゲーム依存に陥らないよう、親や周囲の大人が常に注意して接することが求められる。ゲームをする時間を制限するなどのルールを家族で話し合って決めることも必要だろう。可能であれば、子供がスマホやパソコンを使わない日を設けてもいいのではないか。

 ネット依存の子供のいる家庭は父親の存在感が薄いとの指摘もある。家族の絆でネットやゲームへの依存を防ぎたい。