はやぶさ2、小惑星探査の「本番」が始まる
小惑星探査機「はやぶさ2」の探査が間もなく“本番”を迎える。27日前後に小惑星「りゅうぐう」の上空20㌔に到達するのである。2014年12月の打ち上げから約3年半。30億㌔の航海を経て、これからりゅうぐうへの接地や小型探査機ローバーの投下など科学観測活動が本格化。試料を採取し20年末に帰還の予定である。地球や海、生命の起源と進化に迫ってほしい。
50㌢超の衛星はなし
はやぶさ2は19日時点で、りゅうぐうまで約150㌔の距離にある。これまでの観測では、13日に同距離920㌔でりゅうぐうを撮影し、明るさの等級が約マイナス6・6であるとともに、自転周期がこれまでの想定通りの約7・6時間であることも分かった。
また、12等級の暗い星の光も確認可能な露光観測により、50㌢より大きい衛星(りゅうぐうの周りを公転する)は認められず、りゅうぐうの上空50㌔までは安全に接近できることも分かった。宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、より小さな衛星がないか、引き続き探索も続けている。
はやぶさ2は、地球や海、生命の起源と進化に迫るという科学的な探査のほかに、初代はやぶさで実証した深宇宙往復探査の安定した技術の確立という工学的目的もある。
今回のりゅうぐう探査の場合、地球から約3億㌔離れたところの、大きさが約900㍍の天体に到着するわけで、これは日本から2万㌔離れたブラジルにある6㌢の的を狙うのと同じ精度が求められる。しかも宇宙空間での位置推定に、はやぶさ2は数㌔、りゅうぐうには約220㌔の誤差があるという。
この誤差を小さくしながら小惑星に接近するために、初代の経験を踏まえ、はやぶさ2で採用したのが光学電波複合航法である。電波による測距で地球に対する探査機の軌道を計測するほか、探査機から小惑星を搭載カメラで写すことで、探査機に対する小惑星の方位を計測し、これらを複合することで、地球と探査機、小惑星の3点間の距離を正確に算出するのである。これには京都大学をはじめNEC、富士通、ソウル大学などが協力している。
りゅうぐうへの到着を文字通り目前に控え、探査活動はいよいよ本番を迎える。27日前後にりゅうぐうの上空20㌔に到達後、7月末に高度5㌔での中高度観測、9~10月にタッチダウンやローバーの投下、来年3~4月にはりゅうぐう表面に衝突装置をぶつけてのクレーター生成といった観測活動が予定され、約1年半滞在。来年11~12月にりゅうぐうを出発し、20年末に試料を携えて帰還する。
新しい科学的成果に期待
今後の活動では予想外のさまざまなトラブルも起こり得る。初代はやぶさと同様、果敢に乗り越えていってほしい。
はやぶさ2は水や有機物に富むC型小惑星への世界初のサンプルリターンであり、特にクレーターを生成させての観測も世界初である。米国も一昨年に同様のミッションの探査機を打ち上げており、両者が持ち帰る試料の比較、検証による新しい科学的成果にも期待したい。