辺野古着工1年、危険除去と抑止力維持に必要


 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設に向けた護岸工事の着工から1年を迎えた。

 県内では反対の声が根強いが、辺野古移設は普天間飛行場の危険除去と米軍の抑止力維持に欠かせないものだ。着工1年を機に、改めてそのことを確認したい。

対決姿勢崩さぬ翁長氏

 「辺野古に新基地は造らせない」との公約を掲げ、4年前の県知事選で当選した翁長雄志知事は2015年10月、仲井眞弘多前知事の辺野古沖埋め立て承認を取り消した。だが国が翁長氏を訴えた訴訟で、福岡高裁那覇支部は16年9月、翁長氏の対応は違法と判断し、同12月の最高裁判決で県の敗訴が確定。防衛省は昨年4月に護岸工事に着手した。

 辺野古移設は、普天間飛行場の危険を除去しつつ米軍の抑止力を維持する唯一の方法だ。普天間飛行場に隣接する小学校では昨年12月、米軍ヘリコプターの窓枠が落下する事故が起きた。幸い被害はなかったが、住宅密集地にある普天間飛行場の周辺で多くの住民を巻き込む事故が起きれば日米安保体制を揺るがしかねない。宜野湾市民の間では、危険除去への取り組みが見えないことで翁長氏に対する不満の声も上がっている。

 翁長氏は政府との対決姿勢を崩さないが、県内の市長選では政府・与党が推す候補に3連敗している。移設先の名護市で今年2月に行われた市長選では、辺野古移設阻止を掲げ、翁長氏の支援を受けた現職の稲嶺進氏が敗れた。翁長氏の支持母体の「オール沖縄会議」でも保守系メンバーの離脱が相次いでいる。民意は翁長氏から離れ始めたとみていい。

 秋の知事選に向け、自民県連は5月までに自民、公明、維新の3党で推せる人物を擁立する考えだ。一方の「オール沖縄」陣営は翁長氏の再選を目指すが、ここにきて翁長氏の健康不安が浮上するなど予断を許さない状況となっている。

 こうした中でも、翁長氏は前知事の埋め立て承認の効力を失わせる「撤回」を行う方針を示している。しかし辺野古移設への反対は、県民そして国民のためにならない。

 沖縄県石垣市の尖閣諸島周辺では、尖閣の領有権を不当に主張する中国の海警局の船舶が領海侵入を繰り返している。日本の海上保安庁に相当する海警局は今年3月、準軍事組織である人民武装警察部隊(武警)に編入されることが決まった。海警が海軍と連携し、尖閣周辺での活動を強化することが懸念されている。

 今年1月には尖閣周辺の接続水域に中国海軍の潜水艦とフリゲート艦が進入した。沖縄の離島で生じている危機を、翁長氏はどのように捉えているのだろうか。

地域安定へ着実に推進を

 沖縄は朝鮮半島や中国をにらむ戦略的要衝であり、沖縄に駐留する米軍の抑止力を維持することは日本や地域の平和と安定のために死活的重要性を持つ。県民の負担を軽減するとともに米軍の抑止力を損なわないためにも、辺野古移設を着実に推進していく必要がある。