水陸機動団、離島防衛強化へ役割大きい
南西地域の離島防衛強化のため、陸上自衛隊に先月末に新設された「水陸機動団」の発足式典が、相浦駐屯地(長崎県佐世保市)で開かれ、米海兵隊との共同訓練も公開した。
水陸機動団は離島が侵攻、占領された場合に奪還作戦の主力となる日本版「海兵隊」と位置付けられている。
米海兵隊をモデルに新設
訓練は離島が占領されたと想定し、日米両隊で計約240人の隊員が参加。ヘリコプターからの降下や、水陸両用車「AAV7」を使って前進する様子が披露された。
米海兵隊がモデルの水陸機動団は約2100人で編成。沖縄県・尖閣諸島などの離島が侵攻された場合、AAV7や陸自が導入する米海兵隊の輸送機オスプレイで前線に投入される。
海洋進出を強める中国は、尖閣の領有権を一方的に主張し、尖閣周辺では中国公船が領海侵入を繰り返している。離島防衛強化に向け、水陸機動団の果たす役割は大きい。
水陸機動団の新設は、先月末に行われた陸自改編の目玉の一つだ。改編では、全国五つの方面隊を統括し陸自部隊の運用を一元的に担う「陸上総隊」が発足した。
また尖閣などでの有事に即応できるよう、全国15の師団・旅団のうち8団を機動師団・旅団にし、主力兵器の機動戦闘車を配備する。機動戦闘車は空自の新型輸送機で運べるため、各地方の部隊を南西諸島に迅速に展開させることが可能になる。
南海トラフ巨大地震など大規模災害への備えを強めることも陸自改編の狙いの一つだ。部隊の指揮命令系統を一本化することで、災害発生時の機動力向上も期待される。
もっとも、水陸機動団の運用をめぐっては課題も残る。当初は部隊の一部を戦闘地域に運ぶオスプレイを、相浦駐屯地から約60㌔離れた佐賀空港(佐賀市)の隣接地に配備する予定だった。ところが、今年2月に佐賀県神埼市で起きた陸自ヘリ墜落事故で住民の不安が高まっていることもあって配備のめどは立っていない。
防衛省は木更津駐屯地(千葉県木更津市)を暫定配備先とする方向だ。だが、佐賀空港に比べて南西諸島から遠く、有事の際に支障を来しかねない。
中国では昨年10月の共産党大会や今年3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で習近平国家主席の権力基盤が強化された。習氏が強国路線を鮮明にしたことで、中国の海洋進出が一層強まる恐れもある。
今年1月には中国海軍の潜水艦とフリゲート艦が尖閣周辺の接続水域内に入った。また、今年3月には尖閣周辺の領海に船舶を侵入させている中国海警局が、準軍事組織である人民武装警察部隊に編入されることが決まった。海警が海軍と連携し、尖閣周辺での活動を強化することを警戒すべきだ。
効果的運用へ環境整備を
オスプレイの配備をめぐっては、安全確保策などを明示した上で、やはり佐賀空港の周辺住民の理解を得ていくことが求められよう。水陸機動団の効果的な運用に向け、着実に環境を整えていく必要がある。