人口減少、急がれる東京一極集中の是正
厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が発表した2045年までの日本の地域別将来推計人口によると、東京や沖縄では30年に人口のピークを迎えるが、同年より後は全ての都道府県で減少に転じ、45年時点では東京を除く46道府県で15年人口を下回る。
30年代に全都道府県で
推計では、45年時点の総人口が15年比16・3%減の1億642万1000人だった。安倍政権は地方創生を掲げ、60年に1億人程度の人口を確保するとの長期ビジョンを示している。だが、推計では東京一極集中や人口減少が止まらない現状が浮き彫りとなった。
高齢化の進行も深刻だ。45年には全都道府県で65歳以上人口が3割以上となる。中でも、秋田では5割を超えるとみられている。地方の衰退で若者が減り、それが高齢化に拍車を掛けることが見て取れる。秋田は15年比の人口減少率も全国で最も高い41・1%だ。
近年出生率が改善したため、全都道府県で人口が減少する時期は、前回推計(13年)では20年ごろとしていたが、今回は10年ほど遅くなった。ただ、16、17年の出生数は100万人に満たず、人口減少の傾向に大きな変化はない。
1998年版の厚生白書では、合計特殊出生率1・43の状況が続いた場合の人口が、2100年に約4900万人、2500年に約30万人、3000年に約500人、そして3500年には1人になると計算している。ちなみに、2016年の出生率は1・44である。人口減少への対策には日本の存亡が懸かっていると言えよう。
多くの若者が地方を離れ、出生率が全国で最も低い東京に流入する現状が人口減少を加速させている。東京一極集中の是正が急がれる。
政府は高齢者の地方移住を念頭に「生涯活躍のまち(日本版CCRC)」構想を進めている。
これは、高齢者が社会活動に参加しながら暮らし、医療や介護サービスも受けられるという共同体で、周辺住民との交流で地域活性化を目指すものだ。
高齢者だけでなく、介護などに携わる若者の地方移住も期待される。このほか若者の移住促進には、企業の本社機能の移転や、ITを活用し、自宅などで仕事を行う「テレワーク」の一層の推進も求められよう。
出生率を向上させるには、若者の結婚を後押しする環境も整えたい。少子化の最大の原因は晩婚化と未婚化だ。15年の国勢調査によれば、50歳まで一度も結婚したことがない人の割合を示す「生涯未婚率」が男性で23%、女性で14%に上る。
未婚化が進行するのは、経済的事情のほかに出会いの場が少ないこともある。日本ではかつて見合い結婚が多かったが、1960年代後半に恋愛結婚が上回った。このことが90年代以降の生涯未婚率の上昇につながったとみることもできる。
若者の結婚後押しを
未婚の男女の出会いの場を設けるなど、結婚を後押しする自治体や企業もある。これとともに、結婚や家庭の素晴らしさを若者に伝えていくことも社会全体で取り組んでいきたい。