東日本大震災7年、「復興」から「新しい東北」へ
1万8000人を超える死者・行方不明者を出した東日本大震災から7年目を迎えた。7年前のきょう受けた衝撃と悲しみが、よみがえってくる。犠牲となった人々に鎮魂の祈りをささげるとともに、復興の現状とこれからの東北と日本に思いを致したい。家族・親族・友人・同僚を失った心の痛み、避難生活の苦しみと、計り知れない犠牲を伴った大震災。その記憶を語り継ぐことは、防災、減災という観点にとどまらない、意味を持つ。
インフラ復興はほぼ順調
復興庁によると、避難者の数は1年前に比べ5万人減り、7万3349人となった。仮設住宅の入居戸数はピーク時の約12万4000戸から約1万9000戸まで減少した。鉄道や道路、防波堤などのインフラも大きな被害を受けたが、鉄道は97%で運行を再開。被災道路は9割以上が本格復旧した。「海が見えなくなる」などの議論もあるが、防潮堤など海岸堤防は92%で着工し、2020年度をめどに全箇所での完成を目指している。
NHKの連続ドラマ「あまちゃん」で注目された三陸鉄道も、北リアス線(久慈―宮古)と南リアス線(釜石―盛)が14年に完全復旧したのに続き、来年3月には両線を結ぶJR山田線の宮古―釜石間も8年ぶりに開通する。
このようにインフラの復興はほぼ順調に進んでいるが、最大の課題は、福島、岩手、宮城の被災3県で人口減少傾向が続いていることだ。人口の減少や流出傾向は東京以外のほとんどの地方の課題だが、被災3県には震災による痛手がそれに拍車を掛けている。
人口が減少する要因はさまざまあるが、住む場所と働く場所があれば、人はその地域にとどまり、地域コミュニティーを存続させることができる。その要となるのはやはり産業の復興と活性化だ。甚大な被害を受けた地域の代表的な産業は、水産業だ。しかし、漁獲量は3県とも震災前の水準には達していない。漁港や船など、ハード面では復興は進んだものの、人手不足が復興の足を引っ張っている。
三陸沖は世界三大漁場の一つ。津波被害で一時的に破壊された海の生態系も着実に復活している。豊かな資源を前にして、大きな可能性を持つ三陸の漁業だ。ここに、若く新しい働き手と新しいビジネスモデルが誕生すれば可能性は大きく広がるはずだ。新しい水産業の誕生など、東北が単に昔の状態に復興するのではなく、新しい東北になることは、日本全体が抱える問題解決のモデルともなり得る。
帰還促進へ一層の支援を
東京電力福島第1原発事故によって、福島県では今なお、約3万4000人が県外での避難生活を余儀なくされている。避難指示は、放射線量の高い一部地域を除き全て解除されたが、住民の帰還率は低い。帰還を促進するために国と福島県のさらなる支援が必要だ。
大震災の経験をもとに、南海トラフ地震発生や首都直下型地震を想定し、対応が検討され一部実行されている。その教訓を無駄にしないためにも対策を急がなければならない。