平昌五輪開幕、北による「政治利用」を許すな


 平昌冬季五輪がきょう開幕する。本来であれば心から喜びたいところだが、今回は開幕直前に北朝鮮の参加が決まったことが暗い影を落としている。

 南北の融和ムードが広がる一方、北朝鮮は核開発のための時間稼ぎをしているとの見方も出ている。五輪の「政治利用」は許されない。

 正恩氏の妹が訪韓へ

 平昌五輪には冬季大会で過去最多となる92カ国・地域から約3000人の選手が参加する。選手らが競技に臨むにはルールの公平性確保が大前提で、国ぐるみのドーピング問題を起こしたロシアに厳しく対処したのも、そのためだったはずだ。

 だがアイスホッケー女子の南北合同チームは、韓国の23選手に北朝鮮の12選手を加え、登録選手数は計35人となった。他の国のチームは規定通りの23人だ。平昌五輪に参加する北朝鮮選手22人のうち、当初自力で出場枠を獲得していたのはフィギュアのペアだけだったことも「不公平だ」との批判を招いている。

 北朝鮮の「平和攻勢」に、従来北に融和的な韓国の文在寅政権が振り回された結果だと言わざるを得ない。五輪憲章に「スポーツと選手を政治的、または商業的に不適切に利用することに反対する」との記述があるにもかかわらず、両国の政治的思惑をそのまま反映した決定を下した国際オリンピック委員会(IOC)の責任も重い。

 北朝鮮は「美女応援団」を韓国に送り込んだほか、金正恩朝鮮労働党委員長の妹である金与正党副部長の韓国派遣を決めるなど、南北の融和ムードを高めることに躍起だ。与正氏の訪韓は、世襲独裁を続ける金氏の血族としては初めてとなる。

 しかし、与正氏は米国や国連安全保障理事会による制裁の対象となっている。北朝鮮の芸術団「三池淵管弦楽団」の訪韓の際に貨客船「万景峰92号」を利用したことも、本来であれば韓国が科している制裁の違反に当たるが、韓国は「五輪成功のため」ということで例外措置を連発している。

 これでは北朝鮮を増長させるだけだろう。北朝鮮に対する国際包囲網にほころびが生じることにもなりかねない。

 安倍晋三首相は米国のペンス副大統領との会談で、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に最大限の圧力を継続する方針を確認するとともに、韓国に北朝鮮への警戒を緩めないよう促すことで足並みをそろえた。北朝鮮の脅威に対処するには、日米韓3カ国の連携が欠かせない。

 南北融和を推進する文氏は、このことを決して忘れてはならない。平昌五輪・パラリンピック後には、米韓合同軍事演習で北朝鮮を牽制(けんせい)する必要がある。

 日本選手の活躍を期待

 平昌五輪に参加する日本選手では、冬季五輪で史上最多8度目の出場となるスキージャンプ男子の葛西紀明選手や、2大会連続金メダルに挑むフィギュアスケート男子の羽生結弦選手のほか、ジャンプ女子の高梨沙羅選手、スピードスケート女子の小平奈緒選手らの活躍が期待される。五輪への政治的影響が色濃い中、選手たちの奮闘が何よりの救いとなるはずだ。