節目の年に臨んで、伝統の継承と刷新滞りなく
平成30年が明けた。天皇陛下の御退位が来年4月30日と決まり、平成はあと1年4カ月ほどで幕を閉じる。12月23日を天皇誕生日としてお祝いするのも今年が最後となる。御代替わりを目前にした節目の年に、心して臨みたい。
御代替わりを来年に控え
天皇、皇后両陛下は皇太子殿下御夫妻、秋篠宮殿下御夫妻ら皇族方と共に、新年恒例の一般参賀に臨まれた。参賀者は平成始まって以来最多の約12万人。陛下のお声を直接お聞きする機会も少なくなるとの思いから、あるいは平成の御代を陛下と共に過ごした記念にという人が多かったのではないか。
来年5月1日には皇太子殿下が新天皇に即位され、改元が行われる。新元号は国民生活への影響を最小限に抑えるため事前に公表することになっているが、改元の半年前までに発表する方向で検討が進んでいる。
新元号の選定は「昭和」から「平成」に改元した1989年の手続きを基本的に踏襲する。前回は首相が複数の有識者に原案の検討を委嘱し、官房長官が内閣法制局長官を交えて絞り込み、さらに別の有識者による検討などの手続きを踏んで決定した。これらの手続きが滞りなく進められることを期待したい。
来年4月30日には、退位の儀式が行われる。天皇退位は約200年前の光格天皇以来で、現行憲法下では初めてだ。皇室典範には退位の儀式の規定がないが、国事行為として行う方向で検討される。天皇の地位や国民感情から見ても国事行為とするのは当然だろう。
天皇陛下の退位と関連して、皇位の安定継承についての与野党の見解も示されている。自民党の萩生田光一幹事長代行は「落ち着いた環境の中で、しっかりと話をしていく必要がある」という立場。立憲民主党の枝野幸男代表は、女性宮家創設に前向きの姿勢を示している。
このことは重要な課題であるが、じっくり議論すべきことである。男系継承の伝統には、2600年以上の重みがあることを忘れてはならない。先走った議論より、まずは御代替わりを滞りなく遂行するための準備を粛々と進めていくべきである。
奇(く)しくも今年は明治維新から150年。欧米列強の圧力が東アジアに強まる中で、独立を守るために、先人たちは幕藩体制を一新し、天皇を中心とした新国家体制をつくり上げた。神武創業の昔に帰るという「復古」と西洋文明を積極的に取り入れ、近代化を実現するという「革新」の二つを成し遂げた。
それによって独立を守り、さらには幕末の不平等条約も改正し、西洋と対等に対峙(たいじ)する道が開かれた。さらに西洋近代文明の吸収で、初めて欧米以外で近代的な産業国家が誕生した。今日、発展著しいアジア諸国の産業化も、明治維新がなければ大きく遅れていたことだろう。
維新の経験から学びたい
時代の節目にあり、維新当時に似た国難に直面する日本が、維新の先人たちから学ぶものは多い。
伝統の継承と新しい時代への適合という難しい課題を解決する上でも、維新の経験は多くのヒントを与えてくれる。