オウム後継団体、公安当局は監視を強めよ


 公安調査庁は、オウム真理教の後継団体「Aleph(アレフ)」から独立した「山田らの集団」に立ち入り検査を行った。検査では、元代表松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚の写真や、松本死刑囚の説法を録画したDVDなどが多数保管されていることを確認したという。

 オウムは殺人を正当化する「ポア」という教義に基づき、地下鉄サリンなど多くの凶悪事件を起こした。公安当局は、松本死刑囚を崇拝する動きに対する監視を強めるべきだ。

アレフから約30人が独立

 山田らの集団は、アレフの信者だった女性が、松本死刑囚の次男を復帰させる動きに反発して独立。約30人が2015年から金沢市などで活動している。団体規制法に基づくオウムへの観察処分が来年1月に期限を迎えるため、公安調査庁は先月、アレフと分派した「ひかりの輪」に加え、山田らの集団を対象とした処分の更新を公安審査委員会に請求していた。

 3団体の施設は15都道府県に34カ所あり、ロシアにも数カ所の拠点がある。信者数はアレフが約1500人(山田らの30人含む)、ひかりの輪が約150人で、ロシアにもそれぞれ約400人、約60人いるという。

 オウムが引き起こした一連の事件では、29人が死亡し、負傷者は6000人を超えた。特に地下鉄サリン事件は、世界初の都市型の生物化学(NBC)テロで、全世界に衝撃を与えた。米国は1997年、オウムを「外国テロ組織」に指定した。

 事件では189人が起訴され、13人の死刑、5人の無期懲役判決が確定した。これだけの凶悪事件を起こした団体が、名前を変えて存続しているのは不可解だと言わざるを得ない。

 本来であれば破壊活動防止法を適用して解散させるべきだった。だが公安審査委が適用請求を棄却したため、政府は1999年、無差別大量殺人を行った団体を対象とする団体規制法を制定した。この法律は公安調査官の適用団体への立ち入り検査などを認めるものだが、それでも他国と比べれば極めて甘い。

 アレフや山田らの集団は松本死刑囚への信仰を前面に出している。アレフの幹部の中には地下鉄サリン事件を正当化する者さえいるとされる。

 ひかりの輪は松本死刑囚への帰依を否定しているが、公安調査庁は「麻原隠し」を行っているとしている。現在、ひかりの輪の代表である上祐史浩氏が「麻原隠し」を進め、古参信者らの反発を受けたことが、分裂の原因とも言われる。

 東京地裁は9月、ひかりの輪に対する観察処分を取り消す判決を下した。アレフとひかりの輪が「一つの団体」とは認められないと判断したためだが、到底納得できるものではない。国側が控訴したため、立ち入り検査などは継続できるが、判決の背景にオウム事件の風化があるとすれば問題だ。

事件を絶えず伝え続けよ

 アレフは団体名を隠したヨガ教室やインターネット交流サイト(SNS)を使った勧誘活動を活発に行っているという。事件を知らない若い世代が入信することのないよう、事件を絶えず伝え続けていく必要がある。