のぞみ亀裂、JR西は安全意識高めよ
JR西日本の新幹線の台車で見つかった亀裂は、長さが44㌢で台車の枠の3分の2に達していた。走行中に破断していれば大事故となった可能性がある。
事故の教訓生かされず
台車枠は鋼材製で、断面が幅16㌢、高さ17㌢のほぼ正方形となっている。亀裂は枠の下からコの字形に入り、内側と外側のそれぞれ高さ約14㌢に到達していた。裂け目の幅が最大で13㍉もあったという。モーターと車輪の歯車をつなぐ継手に油が付着し、変色しているのも確認された。
この亀裂は博多発東京行き「のぞみ34号」の13号車で見つかった。国の運輸安全委員会は、新幹線初の重大インシデントに認定した。
今回の車両は2007年製。走行距離は692万㌔で、今年2月に車両を分解する「全般検査」を受けたばかりだった。トラブル当日も、日常的に目視で確認する「仕業検査」を行ったが、異常は発見されなかった。検査の仕方に問題がなかったか検証する必要がある。
理解できないのは、異変を察知しながら3時間、約740㌔にわたって運行が続けられたことだ。出発から約20分経過した時点で、乗務員が焦げたようなにおいに気付いていた。その後も、乗客から「もやがかかっている」との指摘があったほか、保守担当者も異音を確認した。だが「においの程度は弱く、音も断続的」と判断され、運転を中止することはなかった。緊急点検が実施されたのは、JR東海が管轄する名古屋駅だった。
このことに関し、JR西の来島達夫社長は「ダイヤ優先にはなっていないと信じている」と述べた。しかし仮にそうだとしても、安全意識の低さは否定しようがない。
JR西は05年、乗客106人と運転士が死亡した福知山線脱線事故を起こした。運転士が遅れを取り戻そうとしたことが原因だった。その背景には、懲罰的な「日勤教育」や過密ダイヤがあった。
脱線事故の後、JR西は「安全性向上計画」を定め、社員教育などに取り組んできた。また、脱線事故の遺族や被害者への面会も継続して行ってきた。だが今回の問題を見る限り、事故の教訓は生かされなかったと言わざるを得ない。
今回、新幹線には約1300人の乗客がいた。台車が破断していれば、福知山線事故以上の大惨事となった恐れもある。公共交通機関が安全確保を最優先すべきであるのは当然だ。
JR西は、乗務員が異常に気付いた後も運転を継続したことについて「重大な課題」とし、異常がないことを確認できない場合は、ためらわずに列車を止めるよう教育するとしている。悲惨な事故を繰り返さないためにも、職員の安全意識を高め、再発防止策を徹底しなければならない。
信頼を損ないかねない
新幹線は高い安全性が評価されている。日本が誇る交通インフラであり、台湾で採用されているほか、インドでも導入が決まっている。今回の問題は新幹線に対する信頼を損ないかねず、その意味でもJR西には猛省を求めたい。