COP23開催、脱炭素社会へ日本が先導を
南太平洋の島国フィジーが初めてホスト国を担う国連気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)がきょうから17日までドイツのボンで開かれる。今回の会議は、昨年発効したパリ協定(批准は169カ国)を2020年以降実施していくための細則作りをどこまで進展させられるかが焦点。世界は「脱炭素社会」に向けて舵(かじ)を切っており、わが国は環境先進国としてその先頭に立つ必要がある。
米中の動きに要注意
パリ協定は世界平均気温の上昇を産業革命以前に比べ2度より低く抑え、できる限り1・5度未満に抑えることを目指す温暖化防止のための新しい枠組みだ。その完全な実施には、各国が自らの削減目標をきちんと達成しているかを国際的に報告し、検証を受けるためのルールが必要で、その策定が急がれる。
来年開かれる「2018年促進的対話」では、その時点の各国の削減目標を足し合わせた全体目標で、同協定を実現できるかどうかが議論される予定だ。その促進的対話をどのように進めていくか、今回の会議で決める必要があり、そのための準備や各国の意見調整も必須だ。
こうした中、自国産業に有利なルールを主張している中国やインド、離脱表明した米国の動きは要注意だ。また排出責任をめぐって差異を設けた仕組みにするか、同じ仕組みにするかという問題で先進国と途上国の対立が先鋭化している。
これは基本的に途上国が排出量とその抑制について見通しが立たないということが原因の一つだ。途上国に対し環境分野での支援を約束し、削減目標設定と達成への取り組みに透明性を持たせるよう説得すべきだ。
わが国は温暖化対策の分野で優れた技術や知見を持ち、さまざまな政策を実施した経験を持つ。特に低炭素技術の開発では、一日の長がある。既に技術支援が行われているアジアの途上国だけでなく、アフリカ、南米諸国への支援拡大が望まれる。途上国の排出量を減らす2国間クレジット制度(JCM)の普及も促進したい。
また透明なルール作りには、自ら環境保護を行い、世界各国と歩調を合わせた環境対策を行う力を途上国に付けさせることが重要だ。人材育成を支援し、汚染防止のための測定、検証の能力の向上を望みたい。
日本は今、温暖化による国土の水没が懸念されるキリバスなどに青年海外協力隊を派遣すると同時に、他の島嶼国や途上国にも人材を派遣し、教育、職業訓練を行い有為な人間を育てようという計画を進めている。そのスピードを加速すべきだ。
一方、昨年のCOP22では、サイドイベントとして日本の民間環境保護団体を中心に「オーシャンズ・アクション・デー」が開かれた。これまで海洋と沿岸域は、気候変動枠組み条約の中の交渉において、ほとんど顧みられてこなかったが、このイベントで戦略的行動計画が策定され、大きな注目を浴びた。
NGOとの連携必要
このようにわが国には、民間にも力のある環境保護研究機関・団体が少なくなく、その活動の広がり、世界のNGOとの連携の期待も大きい。