九州北部豪雨、土砂災害への厳重な警戒を


 きょうも夕方にかけて断続的に激しい雨が降る見通しだ。引き続き土砂災害や河川増水などに厳重な警戒が求められる。

 線状降水帯形成が原因

 今回の豪雨の原因は、対馬海峡から中国地方西部に延びる梅雨前線に向かい、南から湿った空気が流れ込んで線状降水帯が形成されたことだ。線状降水帯とは、次々と発生する積乱雲が幅20~50㌔、長さ50~300㌔の帯になったもの。福岡県朝倉市では24時間雨量が545・5㍉に上った。

 気象庁は大雨特別警報を発表し、福岡県久留米市は市内全域の約13万世帯30万人以上、朝倉市も全域の約2万世帯5万人以上に避難指示を出した。道路が冠水して避難できない孤立者が発生したため、両県は自衛隊に災害派遣を要請。約7800人態勢で不明者の捜索などを行っている。一刻も早く発見、救助できるように全力を挙げてほしい。避難者への食料などの支援も急ぐ必要がある。政府や自治体はニーズをきめ細かく把握すべきだ。

 福岡県は朝倉市と東峰村、大分県は日田市と中津市に災害救助法の適用を決めた。これによって、避難所の設置費用などを国と県が負担することになる。経済産業省も被災した中小企業などを支援するため、両県の商工会議所などに特別相談窓口を設置する。柔軟で迅速な対応に努める必要がある。

 麻生太郎副総理兼財務相は、今回の豪雨について「想像を超えるもので異常事態であることは間違いない。事態は極めて深刻な状況だ」との認識を示した。大気の不安定な状態が続くため、九州ではきょうも局地的に1時間に50㍉以上の非常に激しい雨が降る見込みだ。

 これまでの豪雨で地盤が緩んでいるため、両県のほか長崎、熊本県で、自治体が避難勧告を出す目安とされている「土砂災害警戒情報」が発表されている地域もある。引き続き厳重な警戒が欠かせない。

 線状降水帯は、2012年7月の九州北部豪雨や14年8月に広島市で土砂災害を引き起こした豪雨、15年9月の関東・東北豪雨の際も発生し、大きな被害を出した。こうした気象現象は、地球温暖化の影響で今後増加することが予測される。

 東シナ海周辺の海面水温は平年より1~2度高い状態で、これが梅雨前線に流れ込む湿った空気の供給源になった。海面水温が1度上がるだけで、降水量が大きく増えることがある。今回のような豪雨被害は全国どこで起きてもおかしくはない。避難経路の確認など日頃からの備えが求められる。

 早めに安全の確保を

 豪雨に見舞われた地元では「記憶にないような雨の降り方」と話している人もいる。豪雨への対応で過去の常識は通用しないということだ。

 被害が大きくなりそうな場合は、最新の気象情報に注意して早めに安全を確保する必要がある。今回の情報発信や避難などの在り方を検証し、今後に生かすべきだ。