日露協議、領土交渉進展につなげよ


 日露両政府は、約3年4カ月ぶりとなる外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を東京都内で開いた。北方領土問題をめぐるロシアの強硬姿勢は変わらないが、安全保障を含むさまざまな分野で協議を重ねて領土交渉の進展につなげる必要がある。

 軍備増強を正当化する露

 今回は岸田文雄外相と稲田朋美防衛相、ロシア側からはラブロフ外相とショイグ国防相が出席。北朝鮮の核・ミサイル開発に関し、さらなる挑発行動の自制や国連安全保障理事会決議の順守を強く求め、国連の場を含めて日露が連携して対応していくことで一致した。

 一方、稲田氏がロシアによる北方領土での地対艦ミサイル配備や新師団の年内配置などを批判したのは当然だ。しかし、ショイグ氏は「ロシア国境線は100%、さまざまな武器により防衛されることになる」と正当化した。

 北方領土周辺はロシアにとって太平洋への出入り口であり、アジア太平洋地域への関与強化を表明するプーチン政権が重要視している。だが北方領土は日本固有の領土であり、不法占拠しているロシアによる軍備増強は到底容認できない。ロシアがこうした動きを示すようでは、日露間の平和条約締結は難しくなるばかりだ。

 日露両国が2プラス2を開催する背景には、中国への警戒感を一定程度共有していることがある。とはいえ、ロシアは中国と共に最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の在韓米軍への配備に反対するなど連携姿勢も示している。

 2プラス2でも、日本は米国と進める弾道ミサイル防衛(BMD)について北朝鮮のミサイル対応が狙いだと説明したのに対し、ラブロフ氏は「BMD配備や地域の軍備強化は、北朝鮮からの脅威に見合ったものではない」と牽制(けんせい)した。これでは、いくら北朝鮮に厳しい言葉を述べても、実際は擁護していると取られても仕方がない。

 2014年のウクライナ危機発生後、米国、フランス、イタリアなど西側諸国とまだ開かれていない2プラス2が東京で開催されたことは、ロシアとしては先進7カ国(G7)切り崩しの意味もある。

 領土交渉を進展させるため、ロシアとさまざまな分野で協議することは重要だが、ロシアの狙いをよく理解した上で臨む必要がある。4月下旬にロシアを訪問し、プーチン大統領と会談する安倍晋三首相も、このことに留意すべきだ。

 2プラス2に先立ち、北方領土での共同経済活動に関する外務次官級協議が開かれた。ロシア側は住宅の建設・改修などのプロジェクト案を示し、日本側もウニやホタテの養殖、観光や医療分野などを提示した。

 粘り強い取り組みを

 共同経済活動に関しては、日露いずれの法制度にもよらない「特別な制度」の設計が焦点となる。しかし、ロシア側は自国の法律適用を求める姿勢を崩していない。

 北方領土問題をめぐるロシアの不誠実な対応は許し難いが、日本は4島返還を決して諦めず、交渉進展に向けて粘り強く取り組む必要がある。